選び抜かれた随筆集
★★★★☆
病床六尺を読んで、病人だからって子規さん・・・・頑固者すぎやしないか?と思ったけれども、こっちは書かれた年代がばらばらなので、理性的な子規を読めます。一日中唸りながら痛みに耐えていたであろう病床六尺の頃は嫌味のオンパレードで、頭でセーブしながらは書けないようでしたが(そこがまた魅力なんだけど)、こちらはまだ症状が軽い頃のものも多々あるからでしょうか。
口述筆記が多かったであろう病床六尺と違い、自分で文のまとまりなんかを考えながら書いているからか洗練された文章も多くあり、今まであまり表に出ていなかった文章たちを簡単に読めるようになったことに感謝します。特ににタイトルにもなっている「飯待つ間」っていう随筆、たまりません。昼飯を待つ間の周囲の描写が主体なんだけれども、いいタイミングで「飯はまだ出来ぬ。」「台所では徳利などのものに触れる音が盛んにして居る。」等と待ちかねている様子が挿入されているのです。「かっと畳の上に日がさした。飯が来た。」はそのままを描く俳句に苦心した子規さんらしいなぁと感じました。
選び抜かれた随筆集だから、俳句にそんなに興味のない私でさえ面白く読めたので、良質な随筆を読みたい方、俳句ファンではないが子規個人を知りたいという方にもお勧めです。