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ポーツマスの旗 (新潮文庫)

価格: ¥662
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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感動のドラマ ★★★★☆
ひとがひとを動かすのは情熱である、そう感じました。
本書は、ポーツマス条約締結にいたるまでの交渉の過程を詳細に記している小説ですが、
交渉をいかに進めて行くか、というハウツー本としても優良と思います。

このような、国家の行く末をかけた大きな交渉を経験するひとは多くはありませんが、
正否が決まる一点を見据えて、入念に準備と予備交渉を進めて行く過程は、感動的です。


ビジネス書としても、歴史小説としても、十分おすすめするないようです。
隠蔽される帝国主義者像 ★★☆☆☆
 「小村外交時代」と呼ばれた一時期があった。日本が帝国主義の道に突き進んだ20世紀初頭の10年である。維新第二世代で怖いもの知らずの小村寿太郎外相が、国権主義者、教条的膨張主義者として、元老たちの逡巡を説き伏せ、韓国併合、満州権益の独占化を強く推し進めたことは、歴史家の一致して認めるところである。
 その彼が唯一失敗し、そのために国民が救われた出来事があった。1905年に、ポーツマスで行われたロシアとの講和交渉である。しかし現在、世間では彼の目論見とは180度逆の評価がなされている。即ち小村は、当時の戦争続行を叫ぶ国民世論に抗して、断固ロシアと和平したと言うのだ。こういう平和主義者小村像の一端を本書が担っていることは疑いない。
 吉村昭は徹底した資料検証者で知られている。彼の書く事実を疑う必要はない。問題は彼が小村をどう表象したかったかにある。結論を先取りすれば、吉村は小村を開明的な現実主義者に仕立て、彼の右派的傾向を注意深く隠蔽しようとする。この矛盾を卓越したレトリックで補うところに、プロ作家としての吉村の腕の見せ所がある。
 『ポーツマスの旗』が前段で述べる、小村の小藩出身者ゆえの苦労、武士道気質、父親の借金の相続、無欲、妻との不仲等々、個人的なエピソードに早くも感情移入してしまうウブな読みについてはここでは問題にしない。
 吉村のレトリックは次の場面で鮮明である。ポーツマス交渉は開始後一週間の内に、御前会議で決めた講和の「絶対的必要条件」が日本の要求通りに合意され、残りの1月間は、「相対的必要条件」にすぎない樺太分譲と賠償金支払いで紛糾するといった小村の「強欲」シーンが続く。おそらく彼個人は、先輩の陸奥宗光外相が日清戦争で清から取った国家予算の3年分に及ぶ賠償金と手柄を競合いたかったのであろうが、そのことは言及されない。
 小村の面子を救うことになる樺太分割案も、ロシア全権のウイッテからなされる。小村の硬直ぶりは、ロシア軍の戦闘意欲が喪失しているとの思い込みからだが。小説はその判断を、満州従軍歴のある主戦派の随員・立花大佐に語らせ、彼自身の意見を覆い隠す。交渉に窮した小村は本国政府に「講和決裂」の願いを送電する。これは日清開戦当時、駐清代理公使の小村が勝手に国交断絶し、公使館を畳んで帰国した行為の2番煎じをさせないよう政府から釘を刺されていることによるものだが、政府は小村の挑発に乗らず、樺太も賠償金も諦めても調印せよと命令する。ここで戦争を再開したら、次の「勝利」は無いことを政府も大本営も認識しているのだ。彼が本国にいたら、あの巧みな弁舌としつこさで、再戦に持ち込んだかもしれないが、ここでは完全敗北である。しかし小説は、訓電を見る随員を号泣させながら、小村については、黙ったまま「電文の端に読了したことを示す署名をして」返した、と冷静さを取り繕う。
 まだある。小村は帰国した年の暮れ、清国全権に予定されていた伊藤博文を押し除けて自ら北京におもむき、ロシアから勝ち取った清国領土である満州の権益の行使を認めさせようとヤクザまがいの恫喝をかける。その様子は外務省編纂の『小村外交史』にすら載っているほどだが、吉村は「激しい応酬の末・・・第21回会議でようやく日清協定が成立した」と、両国の対等関係を装わせる。吉村の視線は小村と一体化し、3ヶ月にも及んだ交渉でぎりぎりの抵抗した果てに調印せざるを得ななかった清国の苦しみには目もくれない。歴史作家としての資質の欠落を示す部分である。
 吉村のレトリックに惑わされず、交渉経過の骨格を論理で読み取れば、小村は最初から交渉をまとめる気がなかったのでないかと疑われさえする。その時日本はどうなっていただろうか。
 吉村は小村寿太郎に、物書きにありがちなロマンを感じたのだろう。一作家が誰をどのように描こうが勝手であるが、近現代の実在者を実名で書く場合には、史的事実からの批判を免れないと知るべきである。
日露後の立役者 ★★★★★
”坂の上・・”で、日露の本を読んだが、
語られない、その後が本書である。
小村寿太郎、彼のような素晴らしい外交官が、日本にはいた。
露の相手は、ウイッテ。ロマノフ王朝末期、極東亜細亜の外交に
逸する事のできない大物だったとある。
もはや、これ以上の戦争ができない軍部首脳が待ちわびていた、
外交による講和である。
小村が、全力を尽くし、無事講和に導くが、
民衆は、正しい情報を与えられず、
戦勝と聞かされていたため、賠償金もとれず、暴発。
日比谷焼き討ち事件が起こり、小村の交渉は
屈辱外交であると、命の危険まで脅かされる。
小村の思い、いかほどだったか?
その後、満州に権益を伸ばしたい米の鉄道王
ハリマンとの交渉破棄。
米との衝突はこの時から、既に開始されていた。
全てが終わり、小村は病に倒れ、抜け殻のようになり、
間もなく亡くなる。
本書は、良書、で星5.
野口英世より小村寿太郎 ★★★★★
全国民から石礫を投げつけられるのを覚悟で、国益追求のため死力を尽くした小村寿太郎。彼のように、孤独を恐れずに自分の使命を全うしようとする政治家は、今の時代いるのであろうか? そんなことからして、日本人が読むべき伝記としては、野口英世より小村寿太郎の方が、私は相応しいと思う。

大衆の欲求が国益に反すると言うことも本書は示唆しているが、現代に生きる我々もこのことを常に心しておくべきだろう。
戦争を始めるのはたやすい、しかし終わらせるのは至難 ★★★★★
 戦争を始めるのはいともたやすい。しかし、終わらせるのは至難の業である。敵味方ともに頭に血が昇って熱狂し、打算に固執する。終わらせたとしても、遺恨が残らず、復讐を起こさせないようにしたい。それが失敗して泥沼になった例は多い。
 本書は近代日本が経験した日露戦争というハイライトの講和会議を淡々と、しかし力強くえがいたものである。小村寿太郎は、労多くして報いの少ないが、しなければならない仕事と認識しつつ、ポーツマスに赴く。相手は老獪なロシアの大物ウィッテ。アメリカのルーズベルトは同情的であるが、むしろ日本政府や日本国民が厄介である。また、ちらつく諸外国のうごめく影・・・はたして彼は無事講和条約締結にこぎつけることができるのか。
 いつもながらの見てきたような、綿密な調査にもとづく吉村節は、その会議の様子をスリリングに描き出す。