三国志演義を超えた名作
★★★★★
この本はほぼ三国志演義に倣って書かれていますが、
筆者が日本人向けに様々な部分をアレンジしています。
例えば、1巻の冒頭から桃園の誓いまでは作者のオリジナルであり、
これによって劉備という青年により感情移入しやすくなっています。
また、董卓暗殺後の貂蝉の行末などは演義とは異なっており、
著者が日本人の感情に配慮したものです。
最後に特筆すべきは曹操です。
演義では完全に悪役の曹操ですが、1人の魅力ある英雄として
初めて描いたのは他ならぬ、吉川英治その人です。
現在はその姿が定着し、曹操は様々な物語で大活躍し、人気も高いですが、
それは吉川英治の功績といっても過言ではないでしょう。
私は正直、この本は演義よりも上だと思っています。
現在も様々な三国志本に影響を与え続けている吉川三国志は
三国志を語る上では欠かすことのできない名作です。
小説?翻訳本?
★★★★☆
今では様々な三国志関連の書物を読みますが、最初はこれでした
三国志というものの面白さをしっかりと教えてくれた記念すべき本です
しかし詳しくなった今再び読むと、少し物足りなさを感じます
小説としての創作が少なすぎ、面白さの大部分は原作の面白さによるのです
特に不満なのは1巻では積極的に創作を行っているにも関わらず、2巻から次第に原作そのままになっていく点です
原作が面白すぎるがゆえに、下手にいじると劣化するのはわかります
でも”吉川英治”三国志と言うからには自分で世界を創りあげていくのが小説家だと思います
今や翻訳本も普及している時代なので、出番がなくなりつつあるようです
王道ですが
★★★★☆
20年ほど前に熱中して何度も何度も読みました。最近になって改めて読み直してみました。
かつてこの本で三国志の世界に入った人間にとっては、この本は永久に色あせない名作だとおもいます。
吉川三国志の後、さまざまな著作が出版されていますが、どの本もいろいろな意味で吉川三国志の影響を受けていると思われるくらい、この本の与えた影響は大きいと思います。
ただ、三国志演義と正史の違いなどがさまざまなメディアで解説されていく中、蜀擁護、魏糾弾という流れが必ずしも正しい歴史的な評価ではないこと、および吉川三国志との類似を避けるためにも異なる視点で書かれた小説が多数出ています。もしこの本で挫折してしまうようでしたら別の本に挑戦してみるのもよいと思います。かつては三国志といえばこの本を避けては通れなかった時代でしたが、いまでは異なる世界観の小説も多数出ていますのでこの本に必ずしもこだわる必要はないでょう。名著であるとおもいますし日本に三国志を普及せしめた立役者ですので個人的には☆5つですが、すでに十分役目を果たした現状をみて☆4つとしました。
今の時代の人が読むにはどうかと思う。
★★☆☆☆
吉川英治の生きた時代には新しく魅力的な三国志だったのかもしれないが、
平成の今、読む価値はどれほどあるのだろう。私には通俗歴史小説史的な価値しか見出せない。
おそらく三国志を全く知らない人が読んだらつまらないというか、分からないと思う。
淡白な上にも淡白な戦闘シーン。
ベタベタの現代語でしゃべる登場人物(例:「君の性質は、全然外交官としては零(ゼロ)だ」by周瑜)。
物語が孔明の死亡時点でぶった切られている点も頂けない。
せっかく中国史に興味を持ち始めた読者を、却って遠ざけてしまうのではないか。
どうしてもこの作品を読みたいという方は、先にマンガ版の三国志をお読みになられると良い。
横山光輝版三国志が王道だが、他にも様々なマンガ家が三国志を描いている。
先にイメージを掴んでから読まないと挫折する恐れがあるのを、ちょっとでも頭に留めて頂きたい。
全8巻の読破もあっという間
★★★★★
わかりやすい文章表現と人物描写の巧みさ、中だるみのないストーリー展開により、とにかく楽しめる作品に仕上がっている。全8巻の読破もあっという間だろう。そして、人間の生き方や歴史の変転に思いを至らすだけでなく、「泣いて馬謖を斬る」の由来を知ったりして、教養も深まると思う。
「劉備=善、曹操=悪」と言う観点が強すぎ、勧善懲悪ものに単純化したかのような傾向が無いわけではない。そこが難点と言えば難点か。
(これは1〜8巻を通してのレビューです。)