主人公達のその後を追いかけたい作品
★★★★★
ダンサーとして出稼ぎに来たフィリピン女性の仕組まれた転落や、在日韓国人の家族の出自をめぐる悲劇など、登場人物が少しずつ重なる連作だ。お互い無関係な同士のが連鎖するストーリーは面白いスタイルだ。
どの話も、主人公の思惑と現実とがずれていって、結果的に破綻してしまうような、非常にやりきれない展開だ。しかし、実はそんなに珍しい話ではなく、誰にでも、いつもと違う道を通ればそこらで遭遇するような普遍的な悲劇に思えるところが現代の不毛という感じがする。そう、知らないだけ、知ろうとしない、目をそらしてしまう世界なのではないだろうか。
主人公達は絶望するだけでなく、自分の立場を受け入れて、最後にはそれを肯定して新しく踏み出していく。多くは女性である主人公達の本能的な生存本能、もしくは再生の力を感じる物語でもある。
連作の形を踏襲して、継続的に主人公達を追いかけて行って貰いたい作品だ。
一気に読み上げてしまう、波乱万丈のドラマです
★★★★☆
売春婦として日本につれてこられたフィリピン女性の話から、最終章まで、登場人物が章毎に入れ替わり、それぞれの人生の裏と表が詳細に描かれています。時がたつのも忘れて、一気に読み上げてしまいました。また波乱万丈でありながら、実際に現実に起きている事件だと思うと、著者の情報収集力に舌を巻いてしまいました。
怒涛のストーリー
★★★★★
梁 石日を読み始めて初期のころに読んだ1冊だったはずですがその怒級の展開にその頃呼んだ馳星周が吹き飛んだ記憶があります。花村萬月のようにこの人も明らかなノワール小説のくくりは嫌って、というかそんな小さな枠には収まりきらない器を持った作家の一人なんだと思う。
帯の解説からしていきなり、マリアは死にたいと思った、日本に来てその日から売春をさせられ覚せい剤で苦しみを忘れる日々。フィリピンからダンサーとして日本に来たはずのフィリピーナが騙され売られ地獄の底を見、借家を借りることもならず山手線の車両で仮眠を取る日々が描かれたかと思うと次には家族が崩壊してしまう在日朝鮮人の資産家。若くして人生がドン詰まりの代議士秘書、とまるで悪夢を紡いで作った絵図のように暗く深い闇を抱えた人々が活写される。この地獄絵図は本当にこの世のものか?
読後、絶望というものがここまで深いものかとただただ呆然とした記憶がある。闇の子供たちも文庫を買ったままになっていて実際、読むのが怖い。