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プラナリア (文春文庫)

価格: ¥510
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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元?病人の機微 ★★★★★
 プラナリアの主人公ルンちゃんは乳ガンで乳房を切除した女性だ。

 重い病気から甦った元病人が、他人に病気の話を切り出すには色んな感情を伴うと思う。
 やっぱり、同情して欲しいと思う人もいるだろう。逆に、"病気で心を入れ替えるほど単純じゃない"と露悪的に病気を強調する人もいるだろう。いずれドン引きされるのだから、最初に話しておくという考えは合理的かも知れない。

 元病人が病気を口に出す理由は様々だが、周囲の人は"同情されたいのだ"としか考えないものだ。

 そんな元病人の気持ちを全てすくい上げて、その機微を表現したこの作品は、乳ガンに限らずあらゆる病人の気持ちを代弁している気がする。

 ルンちゃんは自我が強い。社会性が無いとも言う。しかし、元病人に求められるのは何よりも社会性である。
 ルンちゃんは"乳ガンは自分のアイデンティティーだ"とまで言う。永遠に傷跡の残る病歴を持つ人が、病気のない自分など考えられる分けもない。

 それでも、恋人の豹介や、尊敬できる女性の永瀬さんや、その他の周囲の人が元病人に求めるのはその社会性だ。多分、元病人に最も求められる能力は、ほんの少し周りに合わせ病気を黙っている自制心なのだろう。
 でも、ルンちゃんは自我を選ぶ。

 私が最初に読んだ山本氏の著作は再婚生活だ。山本氏のうつ病の闘病記である。山本氏の代表作であるこのプラナリアが、うつ発症前に執筆された物で良かったと思う。でなければ、"患者体験をもとにした"とか陳腐な評価をされたかも知れない。

 重い病気を経験する前に、これほど病人の心を汲み取った小説を書いた山本氏は、月並みな言い方だが、人の気持ちを汲み取る能力が優れてるのだと思う。

 プラナリアを読んだ後で、再婚生活を思い出すと、あのふてぶてしい病人像を示した作品は、当然、世間の反発が有ることを理解した上で書いたように思える。山本氏の心意気を感じて涙が出た。
捻くれている女性の典型例が満載! ★★★★☆
本小説は、どこにでもいそうな女性の、捻くれた一面がよく分かる短編集である。
「プラナリア」は、乳癌になったことで自暴自棄になり、周りに迷惑を掛けていることを自覚しているが、それが制御できないでいる、所謂、かまってちゃんの話。人間は病気を持つと傲慢になるというのが何となく伝わった。
「どこかではないここ」は、リストラで収入の減った夫、大学生の息子、高校生の娘という家庭環境に囲まれた生活を営むパート主婦の、どこかこのカテゴリーの人間独特の醜さが伝わる話。ラストに現代的な悲劇があり、ちょっと可哀想にも見えるが、こういう展開も分からないではないと思えてしまう。
「囚われ人のジレンマ」は、心理学を専攻する大学院生の彼氏と愛のない付き合いを続けるOLが、自分勝手な振る舞い続ける話。この別れる理由も無く付き合い続ける関係を囚人のジレンマ状態に例えているのが面白い。

これらの短編にでてくる女性は、決して特別ではないと思う。女性なら、こういった捻くれた一面は必ず持っているはずだ。
等身大の好短編集 ★★★★★
 直木賞を受賞した山本文緒の短編集である。
 5作中4作が女性の主人公であるが、背伸びをせず等身大のキャラクターが描かれており好感が持てる。いずれもストーリーそのものというよりも登場人物の境遇や心理の変化が作品の軸となっており、読者は感情移入しながら物語を読み進めることができる。
 例えば4作目の「囚われ人のジレンマ」は、長年恋人関係を続けている彼氏のプロポーズに戸惑う女主人公が描かれているが、彼女がどうするのかどうしたいのかは最後まで分からない。何とも煮え切らないストーリーが多いものの、読んでいて不快感はなく、女性読者の支持を得るのもそのためであろう。
 個人的に最も気に入ったのは5作目の「あいあるあした」であった。この作品だけ男性が主人公であり、他の作品に比べストーリー構成も緻密であるように思われる。
 主人公の「俺」は離婚後会社を辞め、小さな居酒屋を営んでいる。そこへ来た女性客の一人すみ江と同棲しているが、関係は微妙であり他の客にも内緒にしている。
 ある日俺は「人が来るから」と言って一時的にすみ江を追い出し、いつになくおめかしして「俺の女」を駅まで迎えに行く。三ヶ月に一度しか会えないその「女」とは……。
 不覚ながら涙が出そうになった。その後すみ江がいなくなり物語は一瞬緊張状態を迎えるが、最後はまずまずのハッピーエンドに落ち着く。自分ならすみ江がいなくなったところで物語を終わらせるだろうなと思いながらも、主人公への感情移入からハッピーエンドに安堵しているもう一人の自分もいる。読んでいて楽しい、良質な短編集である。
救いようのないリアル… ★★★★★
みんな世の中、
いい人ヅラして、
キレイ事ばかり口にするけど、
誰だって本当は、
さらけだせない嫌な部分持ってんじゃん!

みたいな…

昔、手塚治虫が
『鉄腕アトム』について、
「アトムは完璧ではない。
なぜなら、
悪い心を持たないから」
と話していたのを思い出しました。

はっきり言って救いようのないエンディングの話ですが、
現実の世界にも正解なんて無い訳で、
それでみんなもがいている訳で、
鳥肌たってしまいました…

二十代じゃ絶対に書けない話。読んでもピンとこないかも。

ラストの短編で実力を確信しました ★★★☆☆
女性が主人公の話は、いったい何が言いたいのかわからなかった。
それでも新しい小説的実験をしているのだろうなあ、くらいは思ったのですが、
さいごの短編で居酒屋を経営する中年男が実に見事に描けていて、素晴らしいと思いました。
今度は長編を読んでみたいです。