見て損はない
★★★★★
男、特に社会人なら特に見るべきです。
山崎豊子さんの作品はどれも面白いですが、この作品程心に響く作品はないでしょう。
駆け引き、政治力、根回し、いろいろな意味でカッコイイし、勉強になります。管理職なら見るべきです。
部下の竹之内豊さんにキレるシーンは衝撃で、何度も見ました。
プライドと潔さ
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40−50年ほど前の話でしょうが、企業で働く身からすると、その悩めるところは、当時のものと酷似している。特にその下っ端の台詞は、同じく下っ端の感じるところと瓜二つで、我が意を得たりという感じ。
そうはいってもやはり、旧軍人として育てられた主人公の振る舞いは、第二次ベビーブーマーの自分にはできない高潔さ、プライドの高さがあるので、言葉面だけわかったふりしても、自分なぞにはついにわからない次元のことなのだなと思う。
そうした高潔な人間がいたのにもかかわらず、どうしてああいうことになったのか。個人としては清らかで熱血漢でも、組織の歯車となったとき、どういう結末となるのか。その組織を設計し、方向を決めたトップの責任というのは、下っ端の気楽さからくる無責任なのか。
商戦が熱を帯びて、読んでいて熱くなる!
★★★★★
主人公は、商戦に巻き込まれ、そこで、ぬきさしならない泥沼の戦いを知る。
情報収集、戦略立案、コネを生かした裏工作、相手のかけひき、妨害工作、予期せぬ事故、派閥争いなど複数要素が見事なまでに絡み合い、読んでいて熱くなる。
後半は、主人公への妬みから、上層部との人事摩擦が起こり、主人公は内部の問題にも頭を抱えるようになり、第三巻に続くのである。
今後の展開が楽しみになる終わり方である。
悲劇が襲う
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本巻では壱岐が、大門社長のたくらみで、一緒にアメリカに行き、戦前の同期であった川又と出会い、そこから防衛庁のFXに絡む商戦に巻き込まれていきます。また、壱岐の終生のライバルとなる鮫島も登場。こいつの商売の仕方があくどくて面白い!
本来、軍人時代の人脈を使った仕事はしないと誓った壱岐でしたが、国益を無視した戦闘機の選択を、金ほしさの政治家や官僚たちに左右されることに憤りを感じ、八面六臂の活躍をします。
後半では、一気に時間が7年後に移り、常務に昇進して社長直属の業務本部を統括する壱岐が第3時中東戦争に絡んだ商戦を展開していきます。
同じサラリーマンとしてすごいかっこいいし、何度逆境に陥っても不屈の精神で立ち上がる壱岐は凄いです。警察の取り調べを受けるシーンもかっこよかたったです。
蛇足ですが、本巻で新しく登場する人物のモデルは以下のようです。
東京商事 → 日商岩井
ラッキード社 → ロッキード社
グラント社 → グラマン社
鮫島辰三 → 海部八郎
原田航空幕僚長 → 源田実
貝塚官房長 → 海原治
大川一郎 → 河野一郎
久松清蔵 → 迫水久常
山城防衛庁長官 → 赤城宗徳
三島幹事長 → 川島正次郎
竹中莞爾 → 児玉誉士夫?
腐敗した軍部の幻を見た、戦後の経済戦争
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戦争で大きな傷を心に負った一人の男が、商社マンとして再度国防に立ち向かう。
しかしそこには、やはり利権と欲望にとらわれた魑魅魍魎たちの戦いがあった。
大本営で作戦を立案し、多くの兵を死地に追いやった果て、戦後再度国益に沿った生き方を目指した壱岐にとって、どういう意味を持った戦いだったのだろう。
真の国防、真の国益とは、人命を尊重した戦闘機選択であるという、当たり前の信念の前に立ちふさがるのは、国を己の欲望のために利用する、権力と言う妖怪ども。
自分が命を懸けて戦った国、11年間のシベリア抑留中に望郷の念をあふれさせた国とは、こういう国に成り果てていたのか?そう言う念の中での戦いだったに違いない。
また、勃発した中東戦争を利用した、企業同士の利益のむさぼりあい。
経済戦争とは、人道とはまた違う道を進まなければならないのか・・・・。
戦後の企業にも、腐敗した軍部の縮図が見えるような気がする