緩急の付け方がすばらしい!
★★★★★
主人公は戦後直後から11年間シベリアで捕虜になり、帰国後は商社に勤めだす話である。
主人公が回想するシベリア抑留の悲惨さは壮絶であり、それが見事に描写されている。
(シベリア抑留が悲惨だったとは知っていたが、小説とはいえ想像を超えていた。)
一方、現在、主人公が勤務する商社のオフィスはスピード感があり現代風の描写がされている。
過去(シベリア回想)と現在(商社勤務)の緩急をつけた表現がみごとである。
こんな過酷な経験をしていたなんて
★★★★★
シベリア抑留されていた人々がこんな過酷な経験をしていたなんて、想像を絶する状況です。
人間が人間に対してかくも過酷になれるとは、歴史的事実として私たちは知らなければならない。
山崎豊子のこの筆力はすごい。読むべし。
戦争をやるからには、必ず勝たねばならない。仕事も同じ。
★★★☆☆
最近は、山崎豊子がマイブームで「大地の子」から始まり、「華麗なる一族」、
「沈まぬ太陽」と読破して、「不毛地帯」にたどり着きました。
確かに主人公である壱岐正の11年に渡る、シベリア抑留は悲惨だったと思い
ますが、「大地の子」の主人公の陸一心に比べるとまだまだだと思ってしまいました。
壱岐正は自分から志願をして軍人となり、自己の意志で満州に残りシベリアに
抑留されます。これは、当初から予想されたことで、自分も敗戦の責任の一端を
担っているのであれば、致し方がなかったと思います。
一方、陸一心は中国残留日本人孤児という、自分ではどうしようもない条件下で、
不当な差別と暴力・強制労働をさせられます。陸の半生を読むと、あまりに悲惨で
泣けてきました。それでもなお生き延び、中国の家族を愛し、自分の本当の父親を
捨てそんな仕打ちをした国に最後は残ることを決意しました。人の生き方は、国家
体制や戦争で大きく影響をされます。その中でも生きる選択肢の中で、自分の決意
や責任感が試されているのだと思いました。
壱岐の言葉で、「戦争をやるからには、必ず勝たねばならない」という言葉が
身にしみました。
大東亜戦争は、欧米諸国の侵略から自国を植民地になる脅威から守るための自衛
戦争で、開戦は不可避だったと思っています。
しかし、紙一重にも関わらず日露戦争の勝利が忘れられず、圧倒的な不利を短
期決戦で収束させる戦場での戦術と早期講話の政治力が大東亜戦争では足りなか
ったのだと思います。
歴史にたら、ればがあったとして、大東亜戦争に勝っていたら、今の日本はどう
なっていたのか?敗戦後国体維持ができずに植民地になっていたら、、、今の日本
の戦後復興はなく別の国になっていたと思います。今の私もいないでしょう。
歴史を学び先人の礎のなかで今の生活があります。歴史は繰り返すとも言います。
これまで数多の不幸な歴史がありましたが、今後も同じことが起こる可能性がありま
す。その時は歴史から学び、回避できる手段がないかを真剣に考える必要があります。
教科書で歴史を学ぶのも良いですが、複数の書物や他人の意見を聞いて、複眼的に
歴史をとらえる必要があります。真実は一つでも、解釈は時代や国によって変わります。
この第一巻では、壱岐正の真骨頂はまだ分かりません。これから、経済戦争で
どう勝っていくのかが楽しみです。
たださらさらと 水の流れる
★★★★★
岩もあり
水の根もあれど
さらさらと
たださらさらと
水の流れる。
死生観を身に纏い、私心のない者。
ひたすら、相場を愛する商売人。
自らの保身のため、依存先を彷徨う者。
出世を生きがいとする者。
出世よりは、仕事にやりがいを求める者。
信頼できる上司のもとで伸び伸びと仕事をする者。
仕事に光を与えてくれた上司のもとで働く者。
世界を駆けて大きな仕事がしたい者。
稼ぐことが何よりも楽しい者。
etc…。
企業人のひとりひとりが、
主人公のように感じることのできる
濃厚な人間ドラマです。
人間を収容する器。
それが企業。
人間と人間。
人間と企業。
企業と国家。
いろいろ考えさせられます。
戦争で負けるということ…TVでは短すぎて表現できないもの
★★★★★
昔、仲代達也の劇場版(?)を観た。
仲代のキャラは形相(メイク)で、その敗戦、シベリア抑留の過酷さを表現していたと思う。
今回、唐沢くん主演によるTV Dramaとシンクロナイズドして、当書に目を通した。
やはり、TVの限界だと思ったのは、当書を読むとよくわかる。
国家(民)を守ろうと、身を挺するポジション、家族だけを守るか?深い課題であろう。
現代社会では武器による殺し合いは、とりあえず日本では発生していない。でも世界ではAfganistan、Iraq, Yemen(タリバン、アルカイダ絡み)などが、発生している。
先進諸国間では、その代わり「経済戦争」が起こっている。
家庭を最低守るだけにするのか?コミュニティー、国家、経済圏を守るかの各々のポジショニングが必要ではないかと、考えてしまった…。