これはジャン・クリストフという音楽家の一生を描いた作品ですが、意志を持って強く生きるとは、どういうことなのか見事に表現されています。
不屈の精神という決まり文句が、全然空虚でなく、内実を持って心に響いてきます。
そして、我々が生きていくために芸術がどれほどの助け、あるいは励ましになるか知ることもできます。
もしクリストフに音楽がなかったならば、あのように強く生き抜くことは到底不可能であったでしょう。
同じく芸術たる文学を一生懸命読むことによって、これからまだ長く残されている人生を、クリストフのように強く、また、美しく生きうるのではないか、と希望が湧き起こってきます。
こういう本に出会えたのは、幸せでした。