これが植物の生きる道
★★★★☆
植物は芽を出した所から動くことができない。しかし、環境からの情報を感じていて、静かに対応する。「これが植物の生きる道」なのだ。
植物は光の情報を活用して、(1)発芽する、(2)緑色化する、(3)日向に出る、(4)花芽を作る、といった反応を行う。関わるのが、フィトクロムというたんぱく質だ。赤色光により活性化した後、核の中に移動し遺伝子を発現させる。
この他に、葉緑体、気孔、耐寒性、重力、ミネラルなどの話題が続く。圧巻だったのは、最終章「香りにこめたメッセージ」である。ここだけで1冊の本になる。
舞台は、キャベツ畑。モンシロチョウ幼虫のアオムシに食べられたキャベツが「SOS」の香りを発すると、助けに来るのが寄生バチ。アオムシは卵を産みつけられ餌にされてしまう。キャベツの食害虫コナガが加わるとさらに関係が複雑化する。モンシロチョウやコナガもこの香りを感じていて、有利な場所を選んで卵を産んでいる。
植物間でも、食害される香りが利用される。近くの植物がこの香りを認識すると、身を固くして身構えるという。このような作用を「アレロパシー(他感作用)」というが、のどかに見える自然の中にも生物間のせめぎ合い、そして助け合いが存在する。
この本を読んで、植物の雄弁さを改めて理解できた。しかし、まだまだ未解明の部分が多い。読者の中から、解き明かす者が出てくることを願って、この本は書かれている。もちろん、植物や科学に興味がある方も楽しめる本である。