ボーヴォワールの第二の主著
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ボーヴォワールの第一主著が『第二の性』とするなら『老い』は第二主著といえると思う。
さて『ゾウの時間ネズミの時間』(中公新書)によれば人間の体は50歳を限界に作られているという。つまり生物学的には50を超えた時間というのは「老い(老衰)」もたらすものなのである。ちなみに野性の世界には「老い」は存在しない。なぜなら「老い」=「死(消滅)」だからである。
しかしボーヴォワールは豊富な事例を引用しながら人間にとって「老い」るということが、ただ「死」を待つだけの時間でないことを示している。これは「老い」つつあるボーヴォワール自身の実感でもあったのだろう。
現在医療が進み人間の寿命は飛躍的に延び「古希(古来希れ)」といわれた70歳を超えることも珍しくなくなってきている。と同時にひとりひとりが「老い」るということに真剣に向き合わざるを得ないということでもある。ボーヴォワールの『老い』は「老い」ていく私たちにひとつの道筋を示してくれるのではないかと思う。