思考法が交錯する現代に相応しいベルクソン入門
★★★★★
本書は意識と生命、思考と脳といった本質的な議論や、心霊研究、夢、既視感や離人感といったより実際的で興味深い議論についてベルクソンがなした講演集である。ベルクソンは、体系的な哲学に見られる認識の批判や分析は、「思考を膨張させることが重要なのに、その膨張以前の思考を研究することになり」、精神の分析をくじく、というが(p.10)、その彼の思考が出発して開拓する一歩一歩は、当時の科学的経験をしっかり踏まえてなされたばかりか、読者にち密で確かなものを印象づけるのではないか。他のベルクソンの主著への入門として、彼流の視点と見方(方法)とを学ぶ好著であるばかりか、より実践的な現代の心理学においても、研究法の一つの潮流として顧みられて良い本ではないかと思う。