本書が、ハイデガーやバタイユのみならず、フーコーやらドゥルーズやらのポスト・モダン思想に影響を与えたのは、ムチャクチャ有名であり、哲学・思想に関心のある者にとっては必読書であるのだが、さらに本書は「実用性」もあるのだ。あなたの周りに、すぐ自分のことを自己正当化する人がいるでしょ?その中でも一番タチが悪いのは、同じ土俵では相手に勝てないと感じ取ったときに、ありもしないような次元で勝利することによって自己を正当化しようとするヤツです。たとえば、勉強では絶対かなわない相手に対して、「勉強なんてしても意味がない」などと現在の社会情勢ではまだまだ現実的でない言説を持ち出して、勉強しない自分を自己正当化するヤツとか、どうがんばっても自分よりルックスのいい子に対して、性格というどうとでも取れる指標で「あの子は性格が悪いから」と言って暗に自分は性格がいいからその子よりも上だ、というように自己正当化するオンナとか。
ニーチェは本書で、ルサンチマン概念を核としてそういう奴らのダメさを様々な角度から言語化してくれます。いわく「道徳における奴隷一揆」「想像上の復讐によってだけ埋め合わせするような者ども」などなど。
ストレスの溜まる相手がいて、いずれはその集団の世論を糾合して追放を画策するとしても、当面はどうにもできないようなときは、とりあえず、その困った野郎を言語化すると、多少スッキリしますからね。
哲学書にしては断章形式で読みやすいのでオススメです。