天才が現場でどう仕事するかの具体例
★★★★★
上手い。翻訳も上手い。原文もいいんだろうな。彼の劇の脚本の書き方が、本のタイトル通り、「書いては書き直し」。推敲に推敲を重ねてまず本にする。その後も、あらゆる段階で書き直す。何度も何度も。リハーサルが始まれば、笑いが起きない箇所、動かないところを手直し、ブロードウエイにもって行くまでの間も、駄目とわかれば、ホテルに立てこもって作り変える。プロデユーサー、演出家、役者、批評家、観客の反応すべてから、「駄目」と「いい」を嗅ぎ分け、直していく。「いい芝居よりだめな芝居からのほうが学ぶことははるかに多く、秀抜な芝居からは何も学べない」「優秀なものをお手本にできないのは、道を指し示す道しるべがないからである。自分の想像力の崖っぷちから飛び降り、"絶望の悪魔"とがっぷり格闘するしかない」。機能不全家庭に育った少年が笑いのほとんどない生活から空想の世界で呼吸し生き延び、ニール・サイモンという劇作家になった。「私は、何であれ私の形成期に欠けていたものを埋め合わせてくれる観客の反応が欲しかった」「観客が笑うと、私は満ち足りた気持ちになった。笑い声は、私が認められ受け入れられたしるしだった」。