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死が二人をわかつまで (ハヤカワミステリ文庫)

価格: ¥735
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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トリックへの深い思い入れ ★★★★☆
1944年発表の本作品は、カー名義の24作目に当たり、
あの「皇帝の嗅煙草入れ」(1942年)の次に書かれた
中期を代表する作品とされています。

劇作家のディック・マーカムは、
婚約者のレスリー・グラントとバザー会場を訪れます。
ここで、レスリーはよく当たるとされている
占い師ハーヴェイ・ギルマンのテントへと入っていきましたが、
何とギルマンは、レスリーに撃たれて負傷。
ディックは、一命をとりとめたギルマンから
レスリーが3人の男性を殺した毒殺魔だと告げられるのですが、
そのギルマンが翌朝、密室状態の中、毒殺死体となって発見され・・・。

本作品は、怪奇趣味は全くありませんが、
事件の複雑な真相というカー作品にありがちな傾向は、
健在(?)です。
次々と現れる不可思議な状況と新事実に、
読者は翻弄され続け、
あっという間に結末まで連れ去られてしまうことでしょう。

でも、やはりラストは、
密室トリックの解明で決めてくれます。
このトリック、核心部分は、
独創性のないありがちなものなのですが、
そこにいくつかの要素を散りばめ、
なるほどと思わせるものに仕立て上げているのですから、
さすがカー、と言いたくなります。

ところで、本書で面白かったのは、
若竹七海の巻末解説「やっぱりカーが好き」。
けなしているのか褒めているのか分からない解説ですが、
「カーが好き」な方は、
思わずニヤリとしてしまうこと請け合いです。
また、これからカーを読んでみようという方には、
ユニークな指南書になっているのではないかと思います。

オカルティズム抜きの『火刑法廷』 ★★★★☆
婚約者は、かつて3人の男を毒殺したと占い師から告げられる主人公。その占い師もまた毒殺される。そして主人公にはぬぐってもぬぐい切れない婚約者への疑惑が次々に頭をもたげてくる、とまるで『火刑法廷』を思わせるような展開。ただし、オカルティズムはほとんど感じられないが。

ストーリーはドラマティックで面白いし、密室トリックもよくある機械式トリックではあるがそのトリックを支える仕掛けがなるほどと思わせる出来栄えである。
ただ、犯人はいったい何のために密室をこしらえたのか? フェル博士も説明していないし、密室にする必要はなかったと思う。
カーの密室への執念に驚く ★★★☆☆
タイトルは無論、教会での結婚式の際の牧師の言葉で聖書からの引用である。このタイトルに相応しく、婚約を決めた主人公を襲う事件を描いたもの。カーの密室への執念に驚かされる。

主人公ディックはレスリーと婚約して幸せ絶頂。ところが、正体不明の占い師がレスリーの秘密を教えると言う。そして、バザー会場で、その占い師は撃たれるが、撃ったのは何とレスリー。更に、密室での毒殺事件が続く...。冒頭で読者に興味を持たせる手法は相変わらず。

だが残念ながら、密室の構成方法は独創的なものではなく、登場人物の誤解や錯覚に基づくもの。クリスティなら錯綜した人間関係を主体にした、牧歌的なカントリー・マーダー・ケースにする所を、あくまで密室に拘る所がカーらしい。カーの稚気を楽しめるかどうかで評価が分かれる所であろう。

人間が描けていないとか、トリックに無理があると言ってしまっては、カーの顔が立たない。カーの稚気と執念を楽しみましょう。
古き良きイギリスの殺人のおはなし ★★★☆☆
 図書館から世界探偵小説全集で借りて読もうと思っていたのですが、早川の新刊で出ているのを見てつい衝動買いしてしまった作品です。しかし、その結果、カーは衝動買いして安全な作家では決して無いということを思い出させられました。なにしろ、著作の半数近くは、無条件にはっきり水準以上だと言えない作家なのですから。

 まず第一に、プロットが駄目でした。この作品、出だしの謎自体は、なかなか魅力的なのですが、半分も読まないうちに最も安易な形であっさり解決してしまい、なんじゃいというところでした。話を面白くしようと、努力しているのはわかるのですが、その先はほぼお決まりの展開で、中途半端にシリアスな話だけにユーモアを入れることもできずにそのまま終わってしまいました。

 人物描写は最初から捨てているらしく、いつも通り。シリアスであるべきこの作品に必要な心理描写には、涙ぐましい努力がはらわれてはいるものの、同じく中期の似たような「眠れるスフィンクス」や「囁く影」ほどではありません。本格ものとしては、下手ではないのですが、解説にある通り「古き良きイギリスの殺人のおはなし」であり、早い話が密室トリックに至るまで何も目新しいところは無いのです。全体的にあまり特筆すべき点は無い作品でした。