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幸福な死 (新潮文庫)

価格: ¥580
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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カミュの萌芽 ★★★★☆
カミュ自身はお蔵に入れていた草稿が、カミュの死後に出版されたもの。作品と言うよりは資料というべきか。
たしかに、人物の登場の仕方が唐突であったり、必然性が無かったりするのに加え、ストーリーの構成もちぐ
はぐで読みづらいこと此の上無い。
ただ、「死」に向かって真っ直ぐに入っていく描写の凄まじさや、主人公の目線で風景を描写することによって
主人公の心理の奥底に入って行くという表現の革新性はずば抜けていて、カミュの才能を疑う余地は無い。
「生」「死」「幸福」「恋愛」「太陽」といったカミュの作品世界の核とも言うべき重要なモチーフが散在しており、
カタルシスは得られないまでも一読の価値はあると思う。

訳のせいかも知れないが人称代名詞が示している人物が誰であるのか混乱をきたす場面があったので、別訳
でもう1度読んでみたいと思った。
永遠に未完の処女作 ★★★★☆
 「異邦人」の原型になった未完の処女作を無理やり作家の死後に原稿を纏め直して発表された作品。纏まりにもピントにも欠ける作品だが、「異邦人」同様、アルジェの太陽と海の煌めき、若い肉体と恋愛、等の「生」のイメージが魅力的な作品だ。この存分な「生」の中で淡々と孤独に大地と一体化する「死」は確かに「死に方」としては幸福なのかもしれない。貧乏や恋愛に苦しんだ若きカミュにとって、一生懸命考えた「幸福な死」とはこういう形だったのでしょう。

 G.マルケスはかつて、作家の処女作にはその後に書かれる全てのテーマが包含されているものだと指摘した。この作品はまさにその好例で、幾つかの作品との類似点やテーマの原型をカミュのファン達は読み取ることができるだろう。
意外に読み応えがある。 ★★★★☆
カミュは自作に対する完璧主義から、この草稿を小説として世間に発表しなかった。カミュの日記を読むと、この作品を書いている時期と後に小説の処女作として発表される『異邦人』を書いている時期が重なっている。『幸福な死』を執筆中に彼が『異邦人』の文体を発明し、テーマを絞って『異邦人』を書き始めたということは一般的に言われている事である。作品を読んでいても、『異邦人』のような、研ぎ澄まされた感覚からは程遠い。さまざまな問題が乱雑に配置されていて、全体としてかなりまとまりに書く。文章も、主人公メルソー(Mersoleil/太陽と海の合成だといわれている。ちなみに『異邦人』の主人公はムルソーMeursault/死と太陽の合成といわれている)の内省的な部分や彼の人間関係の作り方(『異邦人』に受け継がれている)、自然の描写(『異邦人』というより『結婚』に寄り過ぎている)など、書かれ方が違っていてリズムが悪い。ただ、ドフトエフスキーの『罪と罰』の殺人との類似を持つザグルー老人を殺害するムルソーの幸福(「幸福は金によって買われる」)への意思は、強力で、その追い詰められたさまは、生涯気胸に苦しめられていたカミュの人生を反映しているかもしれない。希望と絶望が入り混じった状態。。。最後にメルソーは死んでしまうが、彼は「幸福」である。幸福についてというよりも、生の問題について考えさせられる。想像以上に読み応えはあった。ただ、盛り上がりに少々欠けるところがある。
死と生と幸福の関係 ★★★★★
生きることに意味はあるだろうか?このような疑問に絶対的な答えなどないが、一つには「幸せになること」と答えることが出来るだろう。その「幸せ」であるための方法が、個人によって異なることは言うまでも無い。ここには、一人の幸せに死んだ人物のモデルが展開されている。彼にとっての幸せな死とは?皆さんもこの本を通じて、御自分の幸福な死について考えてみてはいかがだろう。
異邦人のプロトタイプ ★★★☆☆
カミュの未発表作品らしいのですが、
プロットがこの後に書かれた「異邦人」を彷彿とさせるものがあります。
文がそのまま「異邦人」と同じ部分もありますし。
注釈がいっぱい入っていて、
もしかすると研究者むけなのかも。