ジェイムズの基礎たる主張は次のようなものである。
世界は一であるか多であるか、宿命的なものであるか自由なものであるか、これらはどちらも世界に当て嵌まるかもしれないしまた当て嵌まらないかもしれない観念であって、この論争は果てることがない。しかし、今もし一つの観念が他の観念よりも真であるとしたならば、実際上われわれにとってどれだけの違いが起きるであろうか。もしなんら実際上の違いが辿られえないとするならば、その時には二者どちらを採っても実際的には同一であることになって、全ての論争は徒労に終わるのではないか。
ジェームズは真理というものを相対化して、真理とは実生活において有用であるかどうかである、と言う。その人がその観念を真理だと思えるかどうかが大切なのだということである。ジェームズにとって哲学とは「傍観者的なひややかな真理の探究ではなく、生活の基底そのもの」であり、「彼が生きていくための信仰ないし信念」であった(本書訳者解説より)。彼にとって哲学は、彼を救うものであったのだ。そして、プラグマティズムとはそのための方法論だったのだ。私はこのジェームズの哲学に対する態度に敬服せずにはいられない。
哲学の役割ないし目的をどのように捉えるかによって、好き嫌いは分かれるかもしれない。しかし、本書のメッセージの強烈さはまさに不朽であると言ってよいだろう。哲学をする際には必ず読むべき書物であろう。