イギリス歴史小説の大家ローズマリ・サトクリフの遺作。1992年に死去したサトクリフの原稿の中から偶然発見された『Sword Song』は、彼女の最高傑作と呼ぶにふさわしい作品だ。

   主人公の少年は剣の達者なバイキング。本書は、はからずも人を殺したことで国外追放となり、兵士としての新生活を始めた彼の冒険を描いたスリリングな長編小説。そのはるかな旅路はイギリスからダブリンへ、さらにスコットランド西海岸はずれの島々へと続く。そこで彼を待っていたのは今後何十年という自らの人生を決定づけるある男との出会いだった。宿敵スコットランドとのむごたらしく血なまぐさい戦いを通じて、少年はいつしかりっぱな青年へと成長を遂げていく。サトクリフならではの味わい深い1冊だ。