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学生と読む『三四郎』 (新潮選書)

価格: ¥1,260
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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私も一緒に「成長」できた気がします ★★★★★
 《成城大学という場で、ある教授が学生たちに文学を教える行為をめぐる詳細な記述》を読むことを通じて、読者は「文学を学ぶことの意味」もっと言えば「人生を生きる意味」について深く向き合わざるを得ない構造を持った本である。

 実際に『三四郎』を「読み」始めるのは後半過ぎからであり、話の内容もいろいろな方面に飛び、良く言えばダイナミック、悪く言えば散漫ということにもなろうが、大学の講義とは元々こういうもの。学生時代を思い出しながら、非常に楽しく読んだ。

 特に一人の教育者として、学生に向けた厳しくも優しい眼差しには読みながら何回も心を打たれた。著者と同じように、登場した学生たちの将来に幸あれと願わずにはいられない。

 若干、著者の自意識の高さが鼻につくところも散見されるが、それはご愛嬌。純粋に読書の醍醐味を楽しむ意味でも、文学理論の基礎を学ぶ意味でも、有意義な教育論として読む意味でも、そして若者たちの成長物語としても、価値のある一冊である。
(内容的には)買いです。 ★★★★☆
タイトルから著者がテクスト論を通して学生たちに「三四郎」をこう読み解きましたといった啓蒙的な本かと思っていました(「こころ 大人になれなかった先生」を連想していたので)が、目次からも明らかなように、どちらかというと、「『三四郎』を読んだ、学生たちと私およびS大学」(くどいですが)のほうがより内容に即していると思います。悪意では決してありません。ただ、僕のように考えて本書を手に取った人が、僕のようにいつまでも期待した内容が出てこなくて、結局肩透かしを食うことを懸念しているのです。そのつもりで読めば、ひとつの物語としても読め、(すこし大げさですが)ゼミを疑似体験できます。
石原先生に師事したかったなあ ★★★★★
日経の書評欄でとり上げられてて、読んだらすごくおもしろかった。
すごいよ石原千秋。
大概の大学教員なら、この大学大衆化の時代、「ふつうの大学生」に対して、『貴様らこのサルが、こんなことも知らんで大学に来るな』と、はなっから見放したりするところを、ちゃんと正面から向き合って「大学生のレベル」へと引き上げようとする。年4回もレポートを課し、そのうえそれ全部添削して返すなんて、信じ難いほどの労力ですよ。
少なくともこの人は、研究者である自分と等しく、教育者であり続けようと自らをきびしく律している。そこにうそ偽りなく感動しました。
ただね、この本に登場する「ちゃんとした文章が書けない男子学生」に、「自分の気に入った研究者の真似をしなさい」とアドバイスしたら見違えるように進歩した、というくだりはどうかと思う。だって、学生がコピーした対象が自分(石原千秋)なんだもん。そりゃ事実なんだろうけど、さすがにそれを臆面もなく書くのは恥ずかしいぞ、石原。
それからもうひとつ。ふつうの人である私から見ると、やっぱり文学って、なんか胡散臭い。この本に登場する学生たちの「成長の軌跡」は、申し訳ないが「素直なフツーの子たちが、なんだかヘンな方向に行っちゃった」風にしか見えない。
中途半端の効用 ★★★☆☆
大学論としても、大学生論としても、出版業界論としても、テクスト論としても、中途半端だと思う。
しかしこれは、著者の意図するところで、論文が生成される現場を、まさにカルチュラル・スタディーズ(時代状況の中で論じる方法)的に浮かび上がらせている。逆に、このような視点がないと、「中途半端」という評価で終わってしまいかねない。学生達が生き生きと活写されているのが、良かった。
テクスト論的分析とは、不思議なものだ。テクストそのものにこだわって作っているのに、逆に、もともとのテクストを知らなくても、理解できてしまう。それだけ方法論として洗練され、普遍性へ向け開放されているということだろうか。一方で、他書だが、原テクストがなくても、この論文は成立してしまうんじゃないかというものもあった。また、学生達の論文は、刺激的であった。
読了して思ったのは、「学生の成長」というより、「才能や学問の残酷さ」である。社会人になっていく学生達が、「自身の才能」や「学問的知見を身につけた自分」と、どう折り合いをつけていくのか、描かれていない部分が興味深い。
文学を学ぶ意義を教えてくれる本です。 ★★★★★
最近すっかり受験国語の専門家となっている石原氏が、成城大学での講義を題材に、学生が『三四郎』を読み解いていく過程をつづったものです。読売?の書評でこの本の存在を知りました。石原氏は専門書のみならず、一般向けの本(理論社のよりみちパンセのシリーズ等)を書いても大変面白く書く才能があります。この本も、時折息抜きになる話を取り混ぜ、読者を飽きさせない工夫が随所に見られます。新刊書店の評価についての記述を含め、実名がたくさん出てきて、大学からの帰り道は気をつけないといけないのでは?と思わせる表現もあります(特に172頁!)。国文学は現在存亡の危機にさらされており、一般の人からすれば役に立たない学問と考えられていますが、この本を読むと、文学を学ぶとはどういうことかが分かる気がします。