女は二度生まれる [DVD]
価格: ¥4,725
大映首脳陣に「若尾文子を女にしてみせる」と言いきった川島雄三監督が、所期の目的を達成すべく選んだのは、富田常雄の小説「小えん日記」の映画化。本能の赴くままに生きる、天衣無縫の芸者・小えん(若尾文子)が、男たちとの情事を通じて、やがて真の幸福に目覚めていくという、小えんと若尾のキャラを微妙にダブらせた絶妙な素材。
小えんの行動を見ている限りは、ちょっとしたセクシー・コメディといった趣。無垢でかわいい芸者・小えんのキャラクターは、不潔さを感じさせず、見る者に好感を抱かせる。このあたりはコメディを得意とする川島監督の面目躍如といったところだが、愛した男の死によって、小えんの内面に訪れた小さな変化を川島の演出はすくい取り、描いている。男たちを失った小えんが、ラストシーンで駅舎にひとりたたずむ姿からは、力強ささえ感じられるほど。この後川島監督と若尾文子のコンビは、「雁の寺」「しとやかな獣」と傑作をものにしていく。(斉藤守彦)