題名にある「古神道」というのは、儒教や仏教によって侵食される前の神道のことを一般に言います。とはいえ原始的な宗教行為を考古学に基づいて再現してみるといった内容ではなく、これはいわば江戸時代の国学者によるひとつの新しい思想といって問題ありません。その内実は、神意聴取の為の卜占技術の再興といったオカルト面、また古事記や日本書紀を聖典とするがゆえに「日本は神国」といったナショナリズム面を持つ他、漢字伝来前、古代日本人がもっていたとされる文字の調査までも含みます。
本書では江戸期の国学者だけではなくその後、近代から現代にいたるまでの歴史を網羅し、例えば超古代は天皇家の祖先が世界を支配していたと主張する『竹内文献』にまで触れています。更に古神道のオカルティズムの実践方法と理論の紹介、それ以外にも神国日本の理念、日ユ同祖論、神代文字、霊的国防・・・など盛りだくさんの内容。巻末の文献案内も豊富であり、大変参考になります。本書の執筆者の方々が特定の主張を押し出すのではなく、冷静に叙述している点も評価できます。
これほど手軽に手に入る、内容も豊富で秀逸な日本の暗黒面を捉えた書物は他に類を見ません。やや内容はマニアックだと思いますが、日本においては間違いなく需要のある好書でしょう。