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市場主義の終焉―日本経済をどうするのか (岩波新書)

価格: ¥735
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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「新しいリベラリズム」の提唱 ★★★★☆
 本書が出版された2000年は、日本経済が混迷の中にあって、やがて小泉首相の構造改革が行われようとしていた時期である。小泉構造改革とは、従来の日本型システムをアメリカ型の市場主義システムへと転換しようとするものであったことは周知のことである。この時期にあって「市場主義をこえる革新的な社会思想が、いま再び求められている」と宣言した著者の見識は卓見といってよい。

 著者は20世紀の最初の10年間に、個人および国家間の格差が拡大し、勝者と敗者が生まれると予見したが(第3章)、それから7年を経過した今日、事態はその通りになっている。たしかに日本型システムは比較的平等な社会を維持できるが、公正な社会とはいえない。構造改革の主旨は、この日本型システムの弊害を改めるものであったかもしれない。しかし格差社会を生んだのは事実である。今夏の参院選における自民党の大敗と民主党の躍進(私は民主党支持ではないが)は、小泉・安倍政権が推進してきた市場主義偏重政策に対して軌道修正を迫るものであった、ということもできよう。

 著者が提唱するのは、もちろん旧来の社会民主主義的なリベラリズムではない。著者はその「新しいリベラリズム」を、イギリスのブレア労働党政権の「第三の道」政策を援用するなどして説明しているが(第4章)、要するに日本型システムの改革と、それに伴う格差の是正を、同時並行的に行うというものである。(序章・あとがき)

 ほかにもグローバリゼーションがもたらす深刻な環境破壊の問題(CO2削減)にも言及しているが(第2・5章)、これは続著『地球温暖化を防ぐ』(岩波新書)で大きく取り上げられることになる。
安部政権崩壊後のいまこそ役に立つ本! ★★★★☆
今後の日本政治の対立軸は「新保守主義vsリベラリズム」のほかにはないとして、
21世紀における保守とリベラルの対立軸を明確にしようと書かれた本である。

市場主義のもたらす3つの弊害
1.貧富の格差の拡大
2.公的な医療と教育の荒廃
3.伝統的な家族の崩壊

これらはまさしく小泉・安部改革を通じてあきらかになった弊害だが、これらの弊害を
補うものとして、平等な(=排除のない)社会を実現するための「第三の道」を提唱する。

物質的、経済的な価値を重んじるマテリアリズムから、非物質的、非経済的価値を優先させる
ポスト・マテリアリズムな社会に移行したいま、リベラリズムの復権とその進化が必要と説く。

具体的に「第三の道」改革としてどのような政策をすすめるべかということについては、
あまり明らかではないが、現状認識と今後の大まかな方向性についての理解は得られるだろう。

用語の定義についても丁寧に説明してあり、一般の人が読んでも面白くわかりやすい良書。



うーん・・・ ★★★☆☆
著者の斬新な切り口による経済評論にはいつも感嘆させられてばかりでしたが、これはわりと月並みなことを言っているように思えます。例えば、筆者の示す第三の道というのも、結局のところ市場主義と社会主義との中道を行こう、というありがちなもので、その説明のためだけに単に言葉を換えて延々と説明し続けています。また、文章の構成もそれほど良くなかった。通常、論説とはある一つの主張を伝えるために各章、各段落が有機的に連関を持っているものですが、この本においては、各章がそれほど連関を持っているわけではなく、筆者の主張を支えるための各章の機能というものがはっきりとしていない。その結果、結局のところ何が言いたいのかがよく分からない、冗長な文章になってしまっているように思えた。
日本流の新たな経済・社会システムの必要性を説く! ★★★★☆
本書は、現在の社会システム改革において、市場主義原理一辺倒になってしまうことから生じる弊害に警鐘を鳴らし、市場主義原理のみに頼るのでもない、まして社会主義原理に戻るのでもない、両者をアウフヘーベンする第三の道を模索すべきであることを提示する書である。
その内容は、以下のようにまとめることができるであろう。「日本経済を良くしていく上で、市場主義改革は、必要不可欠な方法である。しかし、その方法一辺倒になってしまうことから生じる弊害も大きい。なぜなら、市場主義改革は、排除の思想をもつものだからであり、民主主義を推し進めていこうとする政治体制において、すなわち、すべての国民になるべく平等になることを推し進める政治体制にとって、矛盾するものだからである。ここに、第三の道が必要とされる根拠がある。民主主義体制において、経済を発展させていく際に必要とされるのは、市場主義だけに頼ることでもなく、ましてや社会主義に頼ることでは当然ない。両者をアウフヘーベンする道が必要なのだ」、これである。
また、この道は、国民の意識変化、すなわち、ポストマテリアリズム(環境・健康・自己表現の追求思想)という方向からも要請される。市場主義改革は、マテリアリズムの意識がはびこっている状況で効果を発揮する。国民の意識がポストマテリアリズムに変化したことによって、これに対応できる方向、第三の道が必要とされるのである。本書は、上記のことをあらゆる角度から議論しており、日本経済をさまざまな角度から勉強できる良書と捉えられるので、詳細は本書を参照されたい。
全体的に、市場主義に頼りすぎることの弊害が指摘される(サッチャリズムのもたらしたもの、など)。そして、それをフォローする体制・システムの必要性を説く。がしかし、具体的な内容までは描かれていないような気がする。その意味では、日本の社会システムの方向を提示した内容である。
市場主義改革を推し進めた小泉首相。それによって格差が生じ始めているという今日、本書の枠組からいえば、弱者をどう救済するかという問題が欠けており、この対策がなされなければ、大きな政権交代も生じうる可能性が示唆されている。
「時代文脈」の視点から ★★★★☆
古典派→ケインズ→新古典派という経済学の流れを「時代文脈」の変遷によってとらえるというパラダイムは、原洋之介とも共通する。新古典派経済学的な市場万能主義が見落とし、それゆえに現実離れを来たしている要因をとらえるのに、これは有効な切り口だと思われる。

もっとも、「第三の道」を称揚するあたりのくだりは、いま読んでみるとやや浮ついた感が否めない。「次」を予想するのは難しいものであり、その具体像はまだ見えてきていないと考えたほうがいいのではないか。