地道なランスロット
★★★★★
物語はアルトスやマナゾク王の抵抗から下ってブリトン人はついにサクソン人に征服されるところから始まります。主人公オウェインはその敗戦に生き残ってしまい恥じています。もうそそげないその恥のため何度も逃げるチャンスはあるのに繰り返しオウェインは大変な仕事を背負い込み続けます。「自分を捨てて」状況にぶつかることでかえって運命が開ける、作品中の言葉では「風がふく」というオウェインの姿に非常に勇気づけられました。ブラッドリーがランスロットを描写して、まるで命なんかどうでもいいというように敵に向かっていく、そのたびにまるで魔法に守られているように無傷なんだ、というような文章がありましたがオウェインは王妃と騒ぎを起こすほど派手ではありませんが、まさに地道なランスロットなのです。
続編
★★★★☆
なんと「ともしびをかかげて」の続編。
続編と言っても「ともしびをかかげて」の世界からは100年は後の話。
主人公はかぶっておらず、前作の主人公アクイラの子孫である事を記す「イルカの紋章の指輪」を持ったオウェインが主人公である、という事位だ。舞台は6世紀後半である。
幾度もの失望、そして訪れるささやかな希望の風、主人公の身の上が二転三転し、主人公オウェインも読者もどこへ連れていかれるのかわからない…そんなギリギリの旅を、最後はさわやかに締めくくってくれます。流石サトクリフ。
灰島かりの訳なので読みやすいです。
矢川澄子の再来か?
★★★★★
最初の数ページを読んだだけで、言葉の美しさに目を見張った。
サトクリフは内容は良いが、重苦しくて読みにくいと思っていたのが、うそのよう。
ぐいぐいひっぱっていく翻訳のおかげで、一晩で読み終えてしまった。
深くため息をつかせるだけの、濃い物語であり、それを語る凛とした言葉だった。
新しい(私が知らなかっただけ?)翻訳者の登場に拍手を送りたい。