ともしびをかかげて 上巻―イルカの青年時代―
★★★★☆
襲撃に悩まされるローマ帝国はブリテン島から撤退します。地方軍団の指揮官アクイラは“ローマ人”か“ブリトン人”かで悩んだ末、家族のもとに帰ります。しかしその直後にサクソン人の襲撃にあい、家族は殺され、最愛の妹フラビアは連れ去られます。アクイラはジュート人に囚われ、ウラスフィヨルドで奴隷として過ごします。何年かたって同地で食糧不足が深刻化し、部族はブリテン島に移動することになります。アクイラもこの移動に同行し、懐かしの故郷の島に戻ります。そしてそこでサクソン人と結婚し息子のいるフラビアと再会します。家族の“敵”側にいる妹に対して複雑な感情を抱きながら、アクイラは彼女の助力で脱走に成功します。人生の目的が曖昧化し、心身ともに疲れ果てていた時、ニンニアス修道士と出会います。アクイラはこの修道士の一言で、ブリテン復興の鍵を握るアンブロシウスに尽くす決意を固めます。家族を奪われ、奴隷となり、数々の苦痛を味わいながらも人生のかすかな光を見つけ出して再び立ち上がるイルカを時に勇ましく、時に繊細に描いています。
児童文学でいいのか
★★★★★
この本を、石井桃子著「児童文学への旅」で知った。
石井桃子とサトクリフとの交流を紹介するなかで本書の紹介があり、
タイトルから、ファンタジーの世界を勝手に想像していたが、
図書館で偶然本書を手に取り、表紙をみてびっくり。
「ローマ!?」
読み始めたら、ぐいぐい引き込まれ、上下巻一気読み。
塩野七海の「ローマ人の物語」側からしかみていなかったブリテン。
そのブリテンが、あたらしい表情で迫ってきた。
サトクリフ、読みまくるしかない!
それにしても、これ、「児童文学」?
この分類のせいで、
多くの人が知らずにいてしまうのではないだろうか。
対象は「中学生以上」になっているけど、
もしも私が中学生のときに出会っていたら、
「だからどうなんだ?」で終わってしまっていたと思う。
今、出会えて、本当にうれしい。