設定はおもしろい
★★★☆☆
表題の作品ではなく、エイトマンか009かを思わせる加速装置のついたサイボーグの話はおもしろかった。
その他の短編は「え、もう終わり?」と思う結末ばかりで少し物足りない。
「メデューサの呪文」はとてもいい
★★★★★
山本弘の短編集『まだ見ぬ冬の悲しみも』が文庫化されたもの。
1篇だけど追加されたが(「7パーセントのテンムー」)、これはどこかで読んだことがあった。
今回の表題作も面白かったが、一番よかったのは、「メデューサの呪文」、言語SFってジャンルがあったら、その最高傑作といってもいい。人間の脳に影響を与える言語ウィルスって設定はほかにもあったように思うが、よくできてる話だった。
アキバ向けと侮るなかれ
★★★★★
まっとうなSF短編集です。一部の描写にそれなりのターゲットを意識したのかな、と思うような部分もありますが、やりすぎることもなく、丁寧に論理を重ねてつむがれた短編はここちよい酩酊感をもたらしてくれます。
サイボーグ009のファンならおもわずニヤリとしてしまうようなギミックも取り入れながら、読後感は意外にもH・G・ウェルズの短編集に似たものを感じました。
正しく「オタク」であれ!!
★★★★☆
◆「シュレディンガーのチョコパフェ」
旧友の科学者・溝呂木は「先進波」を使って因果律を破壊し、
「夢時空」を現出させることで世界を崩壊させようとしていた…。
等身大のオタクによる自己肯定と、他者との
コミュニケーションのあり方を問う物語。
原型は1985年に同人誌に発表した短篇だとか。
その頃から変わらず、未来を前向きで、
肯定的なビジョンで描いてきた著者に拍手。
◆「奥歯のスイッチを入れろ」
改造人間の苦悩と悲哀をパロディにせず、真摯に描いた作品。
「正義の味方」に必要なのは、人と人との信頼関係であるという
ちょっと恥ずかしい主張に十分な説得力を与えるSF設定が秀逸。
◆「メデューサの呪文」
言語SF。
『アイの物語』同様、
進んだ文明は現実よりもフィクションを重視する
というテーマが描かれます。
◆「闇からの衝動」
作家C・L・ムーアを主人公とし、その代表作の
モチーフを組合せ、荒唐無稽な発想でまとめ上げた作品。
作家が持つ想像力の源泉が、著者の想像力によって見事に
形象化されており、じつに感動的なオマージュとなっています。
山本弘の短編SF集
★★★★★
2006年1月に出た『まだ見ぬ冬の悲しみも』の文庫版です。
こちらは以前の内容に加え「7パーセントのテンムー」を新たに収録しているので、買うならこちらを買いましょう。
一般にハードSFというと近づき難いイメージがありますが、山本弘の作品は全体的に読みやすい文体です。
また、短編集ということでどの作品も程よい長さなので、気軽に読めると思います。
中でも気に入ってるのは「奥歯のスイッチを入れろ」と「メデューサの呪文」ですね。
もちろんそれ以外の作品も良作揃いです。
そしてカバーイラストも良いですね。
良く見ると、この短編集に登場するインチワームやSSSやバーサークフューラーのキャップ等が描き込まれていてニヤリと出来ます。