メルロ=ポンティ研究の出発点
★★★★★
本書はメルロ=ポンティの言語論や、構造主義的言語学の研究で知られた著者によるメルロ=ポンティの入門書である。
この本の特徴は1;メルロ=ポンティの書き物の代表的なものを、現在時点の標準的解釈によって解説していること。これは「入門書」として大切であるばかりではなく、これからのメルロ=ポンティ研究にとっても解釈の基準を示すことになるだろう。2;「行動の構造」以前のメルロ=ポンティの書いたものや、生活環境、家族関係にも言及がされている点。従来のメルロ=ポンティ研究では比較的疎かにされていた事柄について、興味深い事実が紹介される。3;メルロ=ポンティの翻訳の誤訳が指摘されていること。『目と精神』の誤訳の指摘はありがたい。
記述は平明で読みやすい。おおいに勧めたい。