多数のエピソードや寓話、偉人たちの格言などを交えながらの展開は多くの自己啓発書と変わらないが、そこから導かれる言葉は「成功するということはほんとうに生きることにほかならない」「仕事で成功を収める秘訣は、適切なトレーニングとか、才能とか、上司とのコネとかではなく、仕事を決めて、その仕事を生涯かけて自分のものにすることだ」といった独特の言い回しが多く、しばし考え込まされてしまう。また、「与える」というルールで得られるのは「今の自分をしのぐ自分になるための、より大きな能力だ」など、7つの成功ルールの背景にある考え方も示唆に富んでいる。
こうしたメッセージにより、人生、仕事、やる気、老い、目標、計画、逆境など、成功を求める際に直面するさまざまなテーマへの指針が論じられている。とくに終盤には、結婚生活や子育て、信仰の問題にぶつかり、苦闘しつつも、使命感をもって克服していく著者自身の姿がつづられている。ここで、成功や決断に対する浅薄な考えは揺さぶられるはずだ。
本書の刊行は1968年で、以来、アメリカで長らく読み継がれてきたという。メッセージに自分なりの解釈の余地が残されているのが、ロングセラーの要因でもあろう。人生の大テーマに挑む際にひも解きたい1冊だ。(棚上 勉)