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宿命の子ら―マロリオン物語〈5〉 (ハヤカワ文庫FT)

価格: ¥1,050
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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壮大な物語の輪が閉じるとき ★★★★★
 本書はマロリオン物語の最終刊であると共に、ベルガリアード物語、マロリオン物語と続いてきた壮大なサーガの総決算に当たる巻でもある。
 しかし、本書の主眼は最後の光と闇の対決ではない。これまでの旅路で見えてきたそれぞれの個性とチームワークがそこに至らせた一つの過程に過ぎない。最初は反発しながらも仲間に加わったザカーズや、常に役割を最優先してきたシラディスですら旅の仲間としてとけ込むその旅路こそが価値あるものであるが故に。
 さらに、対決の後も物語は続き、世界のその後に向けての様々な物事が起こりまた語られるからである。ベルガラスやベルディンの決断とそれに伴う物事は、ある意味では光と闇の対決以上に重みがある。旅の仲間達が別れ、それぞれの日常に戻っていく過程は、これまでの旅が魅力的であったために晴れやかであるが寂しい。その中でもウルギットとシルクのやり取りなど、思わずにやりとさせられるのがエディングス流ではあるが。
 そして、物語は世界の今後を様々に示しつつ、新しい世界を象徴する出来事で幕を閉じる。この、対決の後の世界を描いて印象的なシーンで筆を置くのが本書をなんとも印象的なものにしている。
 また、既刊の「魔術師ベルガラス」「女魔術師ポルガラ」が時系列的には本書の後になりながら、回想録という形で前日譚を描いて読者をファルドー農園に誘うことで、再び「ベルガリアード物語」に続く物語の輪が完成する。比類無き物語の輪を是非堪能して欲しい。