本巻ではそうした印象は影を潜めた・・。機敏でメリハリの聞いた場面転換、速いストーリー展開に、以前のグインサーガにあった感覚がもどったかのように感じた。
もちろんナリスは亡く、グインも彼方へ飛ばされているという状態では一人で舞台を切り盛りできる主役クラスの俳優がいなかっただけかもしれない。その証拠に、残る主役クラスであるイシュトヴァーンのシーンは相変わらずのだらだらとした展開だ。
ともあれ、この久々の好印象が続くのかどうか・・・、次巻に注目したい。
ストーリー的には、マリウスの愛妻オクタヴィアのマリウスについてのセリフ、グインの正妻シルヴィアの行状、リンダの・・・などなど、今後の展開を期待させる伏線が描かれていることに注目。
ディーンは今回に限った事でないにしろ、読んでいてむかつく事しきり。
盤石とも言えるケイロニアでは例の人による醜聞
極めつけは、物語の大半で主役を張っているかの御仁の痛すぎる発言。
も~この人達の発言は、中年読者には耐えられないっす(ま~仕方ないけれど)。
表向きには、ヤンダルの侵攻目的も無くなった今、事後処理に向けて責ある人は粛々と事の回復に尽力を
つくす光景にはうたれるものはあります。
気になるのは、作者が妙に100巻前で盛り上がっているのが、なんだか白けムードを醸し出しているのは
気のせいでしょうか?
今までは、発売初日に買い、1,2日で読み通せる魅力がありましたが、今回は、数ページ読んで、放置期間
が一ヶ月以上という・・・快挙をやってしまうほど・・こんなに求心力のない物語だったのかなぁ?
ファン100%が今の内容を肯定しているとは限らない事を理解して欲しいです。
風呂敷は徐々に、本当に徐々に畳まれつつあるかのようですが、本巻の主たるイベントは単に「少年らしさを失って変わり果てたイシュトが、カメロンとの精神的愛憎劇を繰り広げた挙句、我が子と対面して……」だけです。百巻にも亘る大河ロマンの終盤を疾走する勢いだとか、読者を巻き込んで放さぬ迫力だとか、急転直下の意外な事実だとか、そういう「終わり近辺ならではの力強さ、魅力」を期待して本書を手にすると、まず間違いなく裏切られた気持ちになります。
ただし、50巻前後のつもりで読むと、それなりに楽しめるかもしれません。
私は淡々と読了させていただきましたが、どうしてもこれが「95巻」だという実感が未だに湧いてきません。困ったものです。