FIASCOじゃなかった!
★★★★☆
このレビューを書く寸前まで、ずっと『FIASCO』だと思っていた。まさに大失敗!
まず作者の考える知性の行く先としての世界がある。これは論理的なものだ。その論理的思考から導き出される「想像」としての論理が文中にある。その論理からすれば自明の知性(地球人)が、その論理からはうかがい知ることのできない知性(宇宙生命)とコンタクトを図る。だが、「大失敗」とは当然起こりうる知性と知性とのコンタクトの失敗のことを指すのではない。我々の科学の仮説を積み重ねていく方法そのものの中に失敗は存在し、そこから進む科学の発展の中に同じく存在する。だが、そこには皮肉もある。彼らが我々で我々が彼らになり得るという文明批判的な要素も含まれてるのだ。また、冒頭の『バーナムの森』は『ソラリス』の残像を引きずっている。だが、『ソラリス』と大きく異なるのは、これが物語性の強い小説であるということだ。つまり、純粋にストーリーが楽しい。話が前に進む。仕掛けもある。挿話も多い。しかし、強いて言うなら、これは長い長い短編小説である。自分の物理についての知識を確かめながら、美しいバーナムのイメージと、圧巻の最後のイメージに酔うのが「正しい」読み方だ。
「人間が持つ認識能力の限界」が招く悲劇
★★★★★
SFというジャンルを巧みに利用しながら、「人間が持つ認識能力の限界」が招く悲劇をレムは描き続けた。それは必ずしも空想世界だけの出来事ではなく、人間社会においてごく日常的に起こっている出来事でもある。いつもながらのしびれるような結末だ。
レムのコンタクトもの
★★★★★
金星応答なし、エデン、ソラリス、砂漠の惑星、天の声といった他星の生命体とのコンタクトものです。話の大きな方向性としては、今までのコンタクトものと近いのですが、他の作品にはない面白さもあります。例えば、ロボットアニメに出てくるような乗り物(人間が操縦する二足歩行のロボットをレムが描くとこうなるのか・・・)、何光年も離れた星との往復に関するロジック、人間と対話しつつ状況を分析するコンピュータ(ゴーレムを彷彿とさせる)、登場人物が読む本として出てくる冒険譚・・・など、挙げていくときりがありません。エデン、砂漠の惑星、天の声を読む時間を幸福と感じる人であれば、この本を読むのも同じように幸福な時間になるのではと思います。
読みやすくはないけれど
★★★★★
読みにくい作品ですが、ゆっくりと文字を追ってみました。そして確信しました。
文学作品として美しくも優れてもいないかもしれませんが、これは「強い」小説です。
啓蒙時代の小説のように説教くさく、超現実主義の小説のように多義的です。
ギリシャ悲劇のように簡素で、小学生の作文のように混乱しています。
読み終わって、自分がすっかり別の人間に変わっているのに気づきました。
しかし、電車や寝台で読むにはおよそ適さない書籍です。