鋭さが足りない
★★☆☆☆
読んで少々落胆。
丹念に資料等を参照しているのはわかるが、その羅列にとどまり新しい切り口などが見つからない。
「南極1号伝説」のような、当事者の声を聞ける部分も一部で、分量的にもたいしたことはない。
そもそもロリコンと言って、それが2次元に対するものなのか3次元に対するものなのかで、こんにちは明確に分化してきていると思うが、その視点が乏い。
(というかむしろ、2次元への嗜好は3次元から分化したのではなく、同じ少女嗜好であっても、根本は違うと思うのだが)
一番長く割いている「オタク」の章も、オタクと一言で言っても時代によってその意味合いは変わってきているし、人種も性向もさまざまなのに、そういう論点はなしに単にオタクという言葉を乱用している感じ。
特にこの章が、資料によって後追いしている感じで、いわゆるその渦中にいる人間からすれば、実感に乏しい論であると感じるかもしれない。
たとえば「ストライクウィッチーズ」を2次元美少女の消費の代表例として挙げているが、その図像が支持されて人気が出たわけではないことは、リアルタイムで追っていた人間は実感として持っているだろうが(かえってアニメファンは放送開始当初は呆れていたはず)、その図像によって支持されたかのように書かれるのはちょっと違和感があったりするのである。
ロリコン総論
★★★★★
『南極1号伝説』でラブドールの変遷と現状を描き出した著者の最新作。当事者への豊富な取材により魅惑的なアングラ性文化の実態に光を当てた前著が圧倒的に素晴らしかっただけに、関連テーマを扱った本書に対する期待はいやがうえにも高まった。しかし、その期待はやや裏切られたというのが正直な感想だ。
今回のロリコン論は、先行研究(評論)を手際よくまとめたロリコン文化の総合的な解説、といった色合いが強い。まずロリコンの対象年齢や最も人気のある年頃(第二次性徴が開始する10代はじめ頃)、ペドフィリア(小児性愛)や幼児婚との関連性や相違点、ロリコン概念の発達史などを論じた後、少女ヌードやロリコン雑誌や盗撮のブームから昨今のTバック小学生まで、流行の歩みを振り返る。次いで、オタク文化におけるロリの諸相を、「クラリス・シンドローム」、ロリコンまんがの誕生、女子ヲタによる同人活動、最近のハルヒ・らき☆すた・エロゲーから、「大友」(大きなお友だち)の出現や、有害コミック問題までを概観しながら解読する。さらに、児童・子供・子どもをめぐる社会認識や各種法律、性的虐待の歴史と現状や社会問題としての問われ方、宮崎勤事件の波紋、児童ポルノ法の成立など、特にロリコンと犯罪に関する論点がまとめられ、最後にロリコンの性愛/恋愛について若干の考察がなされる。ロリコンをめぐる話題が一望できて参考になるが、新しい発見には欠ける感じもした。
とはいえ、関係者へのインタビューもいくつか掲載されており、これは例によって文句なく面白い。ロリコン専門ショップのオーナー、ロリコン雑誌やビデオの編集・企画者、同人マンガ作家、児童性虐待を廃絶せんとする日本ユニセフ協会の広報室室長、少女人形コレクターなどの率直な語りによって、ロリをめぐる二次元と三次元の分岐、なぜ少女が欲望され希求され崇敬されるのか、それを作品として創造しコレクトする理由とは、真正のロリコンとは何か、いったい何が問題なのか、等々がだんだんとわかった気になってくる。人間の性的想像力の途方も無さを痛感させてくれる。
ロリコン文化の拡がりと深さを垣間見せてくれる一冊だ。