インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

オランダモデル―制度疲労なき成熟社会

価格: ¥1,785
カテゴリ: 単行本
ブランド: 日本経済新聞社
Amazon.co.jpで確認
   かつては「オランダ病」と揶揄(やゆ)されたほど経済活力の点で問題の多い国だったオランダが、いまや「オランダの奇跡」と呼ばれて、世界の注目を浴びている。ジェトロ駐在員としてオランダ生活を経験した著者による本書は、多くの日本国民が知りたがっている情報を豊富に提供してくれる。

   オランダ・モデルはポルダー(開拓地)・モデルとも呼ばれ、パートタイムと常勤雇用との時間あたり賃金と社会保険の差をなくし、一種のワークシェアリングを全国的に行ったことで知られる。雇用を改善し、不況・失業を克服するために労、使、政府の代表が協議して、労働側、使用者側それぞれ不利な政策をも含む政策パッケージを作成し、これに労、使、政府の代表が合意して実行した。まさに三方一両損にみえて全体として得になる社会契約的政策パッケージであり、利己心にとらわれてかえって全員損をする囚人のジレンマを全員にとって利益になるプラス・サムゲームに転換する契約である。この政策は雇用を弾力化し、平均賃金を一時低下させて雇用を増やし景気を回復させたのだから、新古典派的・ピグー的雇用・景気対策であるが、それを労使合意のもとで行ったところに意義がある。著者が言うように雇用・賃金改革だけでなく同時に社会保障改革、規制緩和と総合的に行ったことも注目すべきである。それに環境政策やNGOの活動に関してもオランダは先駆国であることが紹介されている。

   本書は「アメリカ・モデルを参考にすべきだという呪縛にとらわれている」日本人にもう1つの道としてオランダ・モデルを示した点でも意義深い。オランダ人は、コンセンサスを重視するという点では日本人と共通点がある。ただ日本のコンセンサスは関係者の癒着という形の悪いコンセンサスであるがそれを良いコンセンサスに変えることができれば、オランダ・モデルは日本に導入されやすいと著者は言う。現在の日本の不況と失業克服のためにも示唆するところが多い本である。(丸尾直美)