今でも…。
★★★★★
「さらってよ」
渡海奈穂さんのこのタイトルを見る度に、読み終えて大分経つ今でも、胸がきゅうっとなります…。
浮気を繰り返す10年来の初恋の男と切れることができず、傷ついた気持ちを隠したまま、都合のいい恋人を演じてしまう三木。
三木の仕事関係の知人で、鷹揚で優しいが、大人ゆえの臆病な狡さを持つ、バツイチの有本。
三木は一人で過ごす寂しい時間を埋める為に、誘いを否と言わない、人の好い有本を利用していき……といった感じの話です。
BLによくある「体から始まる」といった安易な展開ではなく、気持ちの揺らぎなど、キャラクターの心情が本当に丁寧に描かれていて、好感がもてます。
18歳と年の離れた不器用な二人の物語。
良作ですが、もしかしたら、竹を割ったようなサバサバ気質の人には合わないかもしれません。
切ない話が好きな方には本当にオススメです。
(*^-^*)
好きゆえに、どうにもできない気持ち。
好きだからこそ、相手が欲しい。また、相手にも強く望んで欲しい気持ち。
「さらってよ」のタイトルに、主人公の想いが集約されています。
至極大人恋愛。大人でも子供のように悩んだりするのだと思った。
★★★★★
平尾のことを自分は好きだと思っている三木。
でも平尾が都合よく自分を使っているのは知っている。それを認めたくなくて、自分も遊んでいる振りをする。
自分に嘘をつき続ける。
実際遊びで三木の体を抱く平尾。
でも自分が欲しい時に三木が素直に抱かれないのは腹が立つ。
遊んでいるつもりで、無意識に執着している平尾。
三木が最後に自分の元からいなくなって、それでも真実を認めることができずに三木を悪者のように卑下してしまう。
三木を可愛いと思う有元。
でも常識人の自分としては男を良いと思うなんて信じられない。
一般的事柄から外れたことには首を突っ込みたくない。
でも三木が気になる。葛藤しながらも三木の本心が分からず怖い。
怖いということは本当は既に三木が好きなのに、それすらもわからない。
本心を知りたくないばっかりに、自分が傷つきたくないばっかりに、三木を突き離そうとしてしまう。
三者三様。ただ皆、不器用な男たち。
大人の男三人、でも恋には不慣れ。
≪物語≫をちゃんと読んだ気分になれた。
有元には妙に素直な三木がかわいかった。ピンク色の可愛いではなく、さらっとしたかわいさ。
いろんな感情が詰まった正当な恋愛小説。
★★★★☆
渡海さんの作品は結構読んでいますが、
この作品はMyベスト1,2を争うほど良い作品です。
ちなみに1位は『恋になるなら』のほうですが。
さてこの作品、皆さんの仰るように地味です。
でもその緩やかな物語の起伏と収束がすごく
心地良い。
主人公の流され具合に賛否あるかもしれませんが、
恋愛って得てしてこういうモノ。
つい「うん、いいよ」と言ってしまう
惚れた者の弱み、みたいなのがストレスなく
共感できて良かったです。
相手の狡さも自分の弱さも知って乗り越えて、
成就する、すごく正直な恋愛でした。
ラブシーンもゆっくりで、嫌らしすぎず、
物足りなさ過ぎず、話の内容とバランスの
取れた量でした☆
かなり良質な作品
★★★★★
他の方のレビューを読んで購入を決めたのですが、
読めて良かったなぁって思いました
受の主人公・三木が身勝手な恋人の仕打ちに傷ついたり疲れたりしていて、
でも一人になりたくなくて、
気に入っているただの知り合いの有本に食事の誘いをかける……ってあたりからせつないです
理由が「体の要求をされる心配がないから」
「少しの間だけ自分の側にいてくれればその間は忘れていられるから」ですもん
有本に対して最後に必死で縋る台詞は胸に染みますよ
生意気だったり奔放そうに見えて実はかなり健気でかわいい受を書くのが
とってもお上手な作家さんだと思います
一方、本当に大人の男性を書き出すのもお上手です!
「ロマンチストなろくでなし」を読んだ時も思いましたが、
今回の攻の年上(オヤジの域かも)の有本にしてもそうでした
実際いそうですよ、こういう全てにおいて地味で常識的で特筆すべきことが見つからない人
キラキラしいBL世界においては貴重な存在ですけど、それだけに現実味があって
私は好感もてました
三木視点で書かれているので、三木にある意味振り回される有本の心情は
彼の表情や台詞でしか推し量れないですが、十分伝わるのが作者さんの力量ですよね
困惑とか、魅かれていくのとか、それに対する恐怖とか、
特に大人になって臆病になったゆえの狡さなんかは、見ていてすごく理解できてしまって、
………自分の年を痛感しました………
Hシーンも、かなり濃厚な描写なのに気持ち重視でキツくないし、
せつない大人の恋と人間の心情が丁寧に書かれた良作だと思います
イラストもしっとりキレイで雰囲気が良く合っていて好きですが、そのおかげで
有本があとがきで言われてるより、オヤジにもうだつが上がらなくも見えなかったです(笑)
地味にいい話
★★★★☆
浮気ばかりの恋人に内心は傷ついている主人公。 仕事で知り合った、一回り以上歳上の男の優しさにひかれてゆく…。
一見地味なお話ですが、傷つくことを恐れて踏み出せない大人のズルくて臆病な心情がよく描けていて、ちょっと胸が痛くなります。主人公に感情移入してせつなさ倍増でした。