“最後の一行”で発動する、鮮やかなどんでん返し
★★★★★
政府高官の息子ドローヴは、夏休暇を過ごすために、両親とともに港町パラークシ
を訪れ、密かに思いを寄せていた宿屋の娘ブラウンアイズと念願の再会をはたす。
“粘流(グルーム)”――夏の後半に、大陸中央を貫く海を通常よりも
粘り気のある海水が流れる現象――が到来し、隣国との戦争が次第
にパラークシを覆いゆくなか、愛を深めるドローヴとブラウンアイズ。
しかし、壮大な機密計画がふたりを分かち……。
序盤は、ストレートな青春小説といった展開なのですが、中盤
以降、SFらしいスケールの大きな物語へと移行していきます。
終盤まで伏せられている、本作のSF設定については、序盤から再三暗示がなされて
おり、十分フェア。“戦争”を利用した政府の機密計画もなかなかよく考えられています。
そしてなにより、周到な伏線によって支えられた、“最後
の一行”における起死回生の大逆転が実に鮮やかです。
すべてはラスト2ページのために
★★★★★
復刊新訳とのことですが,はじめて読みました.
タイトル,カバー絵,そして諸処の「SF史上屈指の恋愛物語」等の評から,爽やかな一夏の恋のようなものを
イメージしておりましたが,そんな単純なものではありませんでした.
もちろんメインは甘酸っぱい恋愛模様を描いたもの.
ただしそれと平行するように,主人公達が生活する惑星の特徴を表すような物語や,戦争を中心とした
上層階層vs一般市民の軋轢なども精緻に描かれていきます.
これらの伏線はすべてラストにつながっていきます.
なるほど,SFでなくては語れない結末だし,SFでなくては語れない恋愛でした.
「すごい爽やかな読後感」とは言えないかもしれませんが,非常に面白かったです.
凍るのはだれ?
★★☆☆☆
SFを読んでいて、女性キャラクターに共感することって少ないのですが、同性ゆえでしょうか?
この話のヒロインであるブラウンアイズも、友達にしたくないタイプでした。はにかみがちの少女から小悪魔になっていく様子が、生ぐさいというか。
でも、死の危険に満ちた厳しい冬と対比されて輝くひと夏は、いじらしい女の子あってのもの。そういう役割を一途に果たす、うっとおしいほどの正統派ヒロインではありました。
が、サブヒロインのリボンの扱いには動揺させられました。いろんな面を見せる複雑な子だったのに、最後のマヌケなふるまいは何なの?
描写が雑なせいかもしれませんが、それにしたってこんなケリの付け方は、ブラウンアイズのようなよくある偶像とは違ったリボンのキャラクターからすると悲しい! だって、ここで露骨に表れる作者の演出的意図は、グロテスクなまでに主人公の少年にとって都合のいい感慨を狙ったもの・・・。
それは、彼女が選んだ生き方そのものよりよほど、結局はリボンが男目線に屈したことを感じさせて、ショッキングでした。リボン、おまえもか!
どれほど恋愛小説が主人公を中心にして成立するものか、改めて考えさせられました。
そして、与えられた役割を最短距離で果たそうとするリボンの姿は、この話に対する作者の無骨なコントロールぶりをもはっきり示した気がします。
最初の方に出てくる「お話ってものはある目的があって語られるもので、その語られ方にもやっぱり目的がある」という言葉は、「目的」のためにだけ話の中のものが存在することについての読者へのおことわりともとれる・・・?
でも、正当化できてるのか?「目的」の強引さは、この話の中の独善的な大人たちの態度とダブるように思えてなりません。主人公は彼らに「凍れ!」の一言を吐いてきたはずでは?
それが確信犯的なやり口だったとしても、一度興ざめした後では、これしかない!と思えるほど良いラストもじっくり味わうことができませんでした。
あくまで主人公の少年側に感情移入することができれば、私のようにずっこけず、感動的に読めるのかもしれませんが・・・。
ファンタジックながらドライな現実味のある世界観が魅力的なだけに残念で、忘れられそうにありません。
青春SFの傑作という言葉に偽りなし
★★★★★
80年に今は亡きサンリオ文庫で出たSFの新訳。当時、読んだような気もするが、青春SFの傑作とあれば読まずにはいられまい。
ということで、ライトノベルの先駆けみたいなつもりで、気軽に読み始めたんだけど、たしかに、主人公の少年と少女の恋愛はそんな感じだったが、後半はSF というより、実は戦争というものの恐ろしさ、というか、戦争をしてしまう人間(主人公たちは人間ではないが)の愚かさへの痛烈な批判になっている。
結構、考えさせられる。今年度SFベスト1かも。
続編もあり、その翻訳はこの本の売れ行き次第ということなので、是非売れてほしい。
サンリオ版
★★★★★
サンリオ版で 読んでました 古くからのSFファンには この本をマイベストに入れている人も多いはず。最後の最後まで 引っ張って泣かせてくれます。ただ サンリオ版は 致命的な誤訳があり それを信じて読んでいると途中でわけがわからなくなるんですよね。訂正してくれてるのかなー あとマイクル コニイといえば「プロントメク!」出してください 河出さん。これは買いです。お勧めします 私を信じなさい。(で わかる人 はサンリオ版読んでますよね)