最高傑作というのは本当です。
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第四巻は、「源氏物語」中の最高傑作といわれている「若菜上・下」が収録されている。確かに面白い。メインテーマは、紫の上なる正妻がいるにもかかわらず、売れ先のない女三の宮を嫁さんに迎えることになった我らが光源氏君と、この女三の宮に色気を感じモノにせんとした(結局してしまった)柏木クンとのせめぎ合いである。この柏木にも、女二の宮なる本妻がいるのだから話はおかしくというか、怪しくなってくる。
源氏に睨まれた柏木クン、鬱々と引き篭もってしまった。30才代の引き篭もりは平成ジャパンだけでなく、1000年前の日本にもあったのだ。やれやれ。
この女三の宮が生んだ男の子薫は、果たして誰の子か? 源氏? 柏木?
この薫の出生の秘密にまつわるお話が「宇治十帖」のテーマにもなるのだが、大塚センセはこの部分をお馴染み「ひかりナビ」で、”「源氏物語」を読むと、人はなぜ悩むのか、何のために生きるのか、人の一生とは何なのか、といった根源的な問いにぶち当たります。そして、これこそが文学なのでは・・・・・と、私は感じずにはいられないのです”と述べている。
源氏にいびり殺された感じで、鬱々とした心労で結局死んでしまうこの柏木クンだが、この柏木クンの本妻だった女二の宮に接近したのが、源氏と彼の正妻葵の上との間に生まれた生真面目人間(のはずだった)夕霧クンだから、またまた話はややこしくなり、だからというわけでもないが、「源氏物語」は面白いのだ。
この第四巻、「源氏物語」の中の最高傑作といわれるだけあって、21世紀の現在社会にも通じる部分もありメッチャ面白い。古典文学を専攻する国文学の学生とか、専門家にだけに読ませておくのはもったいない。それもこれも大塚センセの読みやすい現代語訳と「ひかりナビ」のおかげである。