タイトルにひかれて表紙の絵に目を凝らせば、ハンカチで鼻を押さえた女が、岩の上にのけぞっている。厚い毛皮の外套を着た男が2人、鼻血の女には無関心で、彼方を見やる。裏表紙では、3人退場。代わりにとぼけた顔の白い犬が、女の倒れていたあたりをかいでいる。空には暗雲垂れこめて…。
でも本書は、不吉な一篇の物語というわけではなく、26の個別な文と、緻密な白黒のペン画とで構成された、アルファベットブック。AからZまでの頭文字の副詞が、ワンセンテンスの短文の中に必ず含まれている。というより、その副詞を中心にしている点が、珍しい。
たとえば「B」なら、「The creature regarded them Balefully」が原文。「まがまがしく/こ(子)らにらむ/いきもの」という訳文に、水から上がってきたばかりの変な生き物が、桟橋の上で3人の子どもをじっとにらんでいる絵。「E」は「Endlessly(とめどなく)」で、長い長いマフラーのはなし、などなど。それぞれは独立した場面だが、全体をタイトルに結びつく1つの筋に想像力でつなげようとして、はてつながるかどうか。ゴーリーの手品に挑むもよし、あるいはお好みの場面だけ、心の箱にしまっておくのもよい。
訳文は、2から3行の縦書き平仮名。原文には必ずある主語が訳文にはなく、おまけに文頭の文字が黒丸に白抜きと目立つので、名調子のいろはカルタのよう。どのページにも、予感としての不吉は漂っているものの、ゲーム感覚で、楽しめる。(中村えつこ)
ゴーリーは多分性格悪いのでしょう
★★★★★
私が持っているゴーリーの本では、これが一番好きです。 底意地の悪いユーモアがたまらないですね。 飽きずに何度も手に取ってしまいます。 訳文も絵の雰囲気を伝えるため慎重に言葉を選んだのでしょう、とてもしっくりきて好感が持てます。
わからない
★☆☆☆☆
評価が高かったので、読んでみましたが、おもしろさが理解できませんでした。
ごめんなさい!
こんな世界があったことがウレシイ!
★★★★★
じっと見ていて、次の瞬間ぷっと吹き出してしまう。
翻訳もなんて上手いんだろう。
この1冊を手に入れてから、次々にゴーリーの本を入手しました。
「うろんな客」と並んで、私の大切な世界です。
ゴーリーを好きな私が好き、
と、そんな気持ちになる本です。
副詞にスポットライト
★★★★★
題名が強烈!!この題名に魅かれて手に取る人も多いのでは?実は私もその一人です(笑)
この本では、A〜Zまでの各ストーリーが描かれていますが、他の本と一味違うのは、副詞を主役にしているところ。副詞がこんなに生き生きと使われているのは、とても新鮮です!
ただし、副詞&ストーリーの傾向は負の要素が多かったり・・・でも、この負の要素がまた面白く感じてしまいます。思わずププッと笑ってしまったり・・・なぜ?!
日常の中での負の要素を取り上げつつも、その一面だけでは見せない。読み手の想像を掻き立ててくれます。ちなみにお勧めなのは、C、L、P、S、Yです(笑)
自分のお気に入りのページを見つけるのも楽しいですよ!
訳がすばらしい
★★★★★
柴田元幸さんの翻訳が最高です。
惚れ惚れしながら英語と日本語を眺めています。
ゴーリーの言語感覚もすばらしいですが
それをリズム感あふれる日本語に翻訳される
柴田さんの才能に圧倒されました。