まだ序章
★★★★☆
上下巻のため何か匂わせて終わるのは
仕方ないことですので、そこの点は割り切ること。
上巻はこの怪しげな島、「刑部島」であった
歴史、そして失踪事件などがメイン。
もちろんミステリーでありますので、途中殺人も起きます。
そして鍵になるある怪死した男が残した言葉…
これは呼んでいくとその言葉に合致しそうな
事象というか、人が出てきます。
それがどうつながっていくのか…
途中の段階なのですが
気になりますね。
横溝有名作品の中では最低のデキ!
★☆☆☆☆
横溝正史最後の長編作品として知られるが、そのデキたるや有名作品の中では最低。
刑部島という島に渡った男が姿を消し、金田一耕助が消息探しの依頼を受けたが、久しぶりに会った磯川警部からその男は、シャム双生児を見たらしい奇怪な言葉を残して既に死んでいると聞かされる、というところから、どっぷり奇怪な島の奇怪な事件に巻き込まれるというものだが...。
シャム双生児、とくに「あいつは体のくっついた双子なんだ・・・・・あいつは歩くとき蟹のように横に這う」という登場人物の言葉からは、江戸川乱歩の「孤島の鬼」を連想させるし、あるいは同書のオマージュとしての意図があったのかも知れない。
しかしはっきり言って、作者は「仮面舞踏会」の頃に筆を折るべきだったのだ。もうその頃から年のせいだろう、論理の破綻が明らかになりつつあり、本書に至ってはもうメタメタ。
なんでこの犯人が双子の片割れを殺さねばならなかったのか? 到底ありえないことだし、なぜそうしたかの説明も一切ない。
単に犯人は気が狂っていたというだけで、読者が納得するとでも思っていたのだろうか? いや、おそらく年のせいでそこまで頭が回らなくなっていたのだと思う。
島の事件
★★★☆☆
昭和53-55年に執筆されたもの。著者が70代の後半に入ってからの作品でありながら、この重量感。
ちなみに金田一ものとして最後に書かれた作品である。
瀬戸内の島を舞台に、金田一と磯川警部が活躍するというもの。上巻は導入部といった感じで終わってしまうのだが、それでも、思い返してみれば殺人がいくつも起きている。このあたり、殺人を防げない金田一ならではといったところか。
また、磯川警部が岡山言葉丸出しになったり、私生活がさらされたり、なんだか扱いがひどくなったように思う。別人かと見まごうばかりだ。
『獄門島』の雰囲気に近く、どうしてもだぶって見えてしまう。
上巻は下巻の序章
★★★★☆
金田一シリーズで、最後の作品となった本作。
上巻、正直ちょっと冗長過ぎないかなぁと感じたのですが、
いえいえ、これはまさに序章。
上巻の終盤頃から、加速度を増してゆきます。
あと二作の金田一モノを書く予定だったという横溝正史。
この作家の、すさまじさを感じずにはいられません。
これは、傑作です。
最後に書かれた金田一耕助作品。もう一人の主人公は「磯川警部」
★★★★☆
金田一耕助最後の事件は「病院坂の首縊りの家」だが、最後に書かれた作品はこの「悪霊島」である。
作品としては著者の定番の一つである、瀬戸内の孤島、村を二部する因縁ある勢力を巡る連続殺人であり目新しいものはない。そして、殺人にトリックらしきものもないので金田一耕助の推理がどうかという作品でもない。他のレビューにも書かれているがオドロオドロしいだけかもしれない。映画化が前提にあったのだろう…。しかし、この作品で語られるのはそれだけではない。
金田一耕助シリーズでは忘れてはいけない人物が二人いる。東京の等々力警部と岡山の磯川警部である。この二人の魅力がなければ金田一耕助の魅力がこれ程際立つこともなかったであろう。著者の推理小説を殆ど読んできた私にとって、この二人がどちらも登場しない作品は、推理小説として優れていても何かが足りないような気がする。
この作品に登場するのは磯川警部である。しかも、彼自身が事件の中心人物の一人である。そして、金田一耕助も知らなかった彼の哀しい過去が明らかになっていくばかりか、それが事件を解く鍵になっていく。更に、金田一耕助の調査を最も惑わせたのは、彼の実直な性格がさせてしまったトリック?である。
私には著者がこの作品で書きたかったのは「磯川警部」ではなかったのかと思えてならない。
「病院坂…」で金田一耕助と等々力警部を書き尽くした著者にとって、この作品を書く経過はどうであれ、やはり書いてよかった作品であるに違いない。金田一耕助と同じくらい磯川・等々力の両警部に魅力を感じていた私にとっては忘れられない作品である。
ただ、初めて金田一耕助シリーズを手に取る人は「獄門島「悪魔が来りて笛を吹く」等から読んだ方がいいかもしれない。