疾風怒濤
★★★★★
十代の頃寝る間も惜しんで夢中になって読みました。まさに痛快無比!未だにこの作品を超える娯楽作品に出会っていません。あまりに愛しく生涯手元に置いておきたい本です。
今も走る続けているチイ
★★★★★
チイは、今も走り続けているのだろうか。
明らかに未完成に終わっている作品だが、そのこと自体はあまり問題にならないと思う。
チイは、時代を超えてあの場所から走り続け、今もどこかを疾走している。あの時代から、すっかり変貌を遂げた我々、日本人の間をすりぬけて。
未完に終わった最終場面が、そのような形になっているので、まるでチイが今も生きていて、オカッパ姿の7歳児のままで、今も僕の心のどこかを走り続けている。愛おしさをひきずることも、物語が未完のゆえだ。。
「犬神博士」の独白で始まる、小説というよりも。誰も記録しなかった、最底辺の人々の日常の記録とも受け止められる。他に存在しない形の比類がない、小説とはいうまい。そういう読み物だ。
この作品の白眉は、終盤の大活劇ではなく、福岡県の直方(のおがた)の木賃宿に転がり込んだ両親とチイ、その所持金をイカサマ博打で、巻き上げようとする、木賃宿の主人こと「瘤(こぶ)おやじ」との対戦の場面だと僕は思う。
敗北に追い込まれてゆく両親。それをじっとみていて、最後に勝負を挑む7歳児。一筋縄ではゆかないインチキ博打うちの「瘤おやじ」との、息が詰まるようなサイコロ勝負。花札勝負では、相手のイカサマに対抗したものの、「瘤おやじ」の完璧な対抗策に、クズ札ばかりをくらわされ、あきらめた瞬間に訪れた勝利。あの種類の勝負ごとをかじった人間であれば、体が反応してしまうような、真剣勝負の瞬間が、描かれている。
夢野久作の最大の作品「ドグラマグラ」も壮大な作品だが、この「犬神博士」は、僕の心の中に住み続ける、最も愛するべき彼の作品だ。
角川文庫は文庫裏あらすじに未完作品と書くべき。
★★★☆☆
夢野久作の犬神博士が角川文庫から出版され
ドグラマグラの表紙を描いてる米倉斉加年先生の表紙も
なんとも言えずマッチしており楽しみだったわけです。
犬神博士は一度図書館の夢野久作全集で読んでおり
きりの悪いところで終了されていた為
あれっ?と思った
解説には未完作品であると書かれていたのでそうなのか
これから非常に気になる展開なのに!と非常に残念だった。
今回この本は角川文庫の夢野久作:少女地獄の様に短編も何個か
入ってると思い、かなり期待していたのですが
犬神博士のみ収録です。
買う気は失せました。
未完作品でありながらも魅力を放ち出版され続ける夢野先生の作風も
素晴らしいのですが、文庫裏箇条書きあらすじに未完作品であると
一言入れて欲しかったです。
これから読む人によっては完結作品で無いと読後解り
悔しい思いをする人がいるのでは無いかと感じたからです。
しかし話の内容は人生は幸福とは呼べないがやたらと才能の有る
主人公のチイの活躍ぶりにはハラハラします。
イカサマギャンブルを見破る所なんか福本伸行先生のカイジが
頭に浮かんでしまいました。
終始面白く読ましていただきました。
未完には悔やまれますが、、、。
※ちなみに丸尾末広先生が夢野先生のファンで犬神博士という作品を書いて
いますが本書の内容とは全く関係ありませんのでご注意ください。