ラスト近く、犯人に対して「生まれてくるべきではなかったのだ」と断言する場面では本当にうんざりしました。
過去に辛い経験をした方が読む場合は読後感が良い本とは言えないと思います。
作者は本当に正しいことしか考えない、弱者の気持ちを理解できない人間という印象が残ります。推理小説・エンターテイメントとして考えてもぐいぐい引き付けられ一気読みというタイプでもない。プロット多すぎて散漫です。
売れっ子作家になってしまったCornwellの最近の作品は、筋に無理がある作品が多いが、この旧作は好感がもてる。描写に初々しい、清々しい叙情性がある。最初の恋人Markも生きているし,嫌味なませた天才少女Lucyもまだ普通のガキだし,Marinoは離婚していないし,ブランド製品の見せびらかしも無い。パソコンでは、dBase,floppyの時代。
最近のCornwellに飽きている読者にぜひお勧めかも。構文、平易;語彙、(医学・解剖用語を除き)平易;読み易さ、5.0/5.0;活字が大きいので老眼に優しい;作品点数、4.0/5.0
コーンウェルの面白さは、何といっても緻密な調査で作品にリアリズムをもたらしていることだろう。事件に出てくる繊維や薬品などについて、コーンウェルが丹念に調べ上げていることに大変感心した。
歯に衣を着せないケイとマリノ警部のやり取りはこぎみよく、会話にリズムがある。また、フットワークの軽いケイの足取りを追うだけでアメリカの土地を自分が歩いたように思え、読み終わった後に肉体的疲労を感じた。
被害者の周りに2重、3重とからまった糸をとき解いていくケイと共に時間を忘れて読むこと間違いなし。