インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

三国志〈第3巻〉 (文春文庫)

価格: ¥630
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
Amazon.co.jpで確認
次代の主役を担うのは? ★★★★☆
第三巻は12代霊帝の終盤から14代献帝初期の時代。しかし最早帝号で時代を数えることにあまり意味はない。中央政府は統治能力を失い、内乱から群雄割拠の時代に入るからである。

正史は政権の正当性を重視する。軍事力で洛陽を占領した董卓は極悪人だし、董卓以前の地方軍閥も「賊」扱い。後世の知識人は暢気な歴史観で登場人物を仕訳することができるが、当事者たちは正統な政権はどこにあるのか、に思い悩みながらも、次第に自らの旗を打ち立てていく。

曹操と孫堅は果敢に戦う。たとえ董卓が強大でも戦うことで名を上げ、次代の主役にのし上がろうとする。一方の袁紹と袁術は名門を背負いアンチ董卓の主役と目されながら、目の前の損得にこだわり、天下の輿望を集めることができない。

本巻でも様々な人物が登場する。だがあまりに多すぎて印象に残るのは名将皇甫嵩や曹操を援ける鮑信くらいか。学を修め徳を積んだ者が称賛をもって多数紹介されるのだが、乱世にあって多くは芽を出すことができない。この辺のギャップが、正史三国志が史記などと比較して人気がない要因なのかもしれない。

そんな中巻末に至りようやく、エリート官僚や名門とは無縁の無頼漢が次第に頭角を現してくる。劉備登場の描き方は漢王朝の高祖劉邦を意識しているのか、とも思った。
董卓、曹操、呂布、孫堅、袁紹、袁術等が動きまわる。三国志らしくなってきた。 ★★★★☆
三国志前史として後漢王朝の宦官等の横暴が延々と描かれて脱落した人も多いのではないだろうか。既に他のレビュアーの方が指摘されているように、このシリーズは宮城谷版「三国志演義」ではないのである。正史はもちろん、後漢書等も参考にしてこの時代の人間ドラマを細密に描きつつ、滔々たる歴史の流れも見失わない。

この時代を動かした人々の実像を解き明かそうとする姿勢は一貫しており、桃園結義なしにいつの間にか劉備の傍に関羽・張飛はいるし、「演義」で曹操の悪玉ぶりを印象づける呂伯しゃ殺害事件も事実ではないだろうと片付けられる。本巻では、董卓、曹操、呂布、孫堅、袁紹、袁術等「演義」でお馴染みの人物が活躍し始めるが、董卓は悪玉としてのしあがっていくだけの賢さ、呂布・袁紹・袁術はその人間の器の小ささへの考察が加えられる。それに対し、董卓に戦いを挑む曹操と孫堅の好漢ぶりが印象的。この2人は確かに劉備達の引き立て役から解放されるべきだ。

登場人物や事件が多く、それが後で参照されるので読み難さはあるが、私は主要人物・事件にはマーカーで色をつけながら本書を読み終えた。
肉太ジューシーな三国志正史の原点版ここに起つ! ★★★★★
文庫化されて2巻が出て以来、久しくなったが2巻目で予測していた通り実に面白くなってきた。しかも、これは今までの羅漢中「三国志演義」やら吉川・横光・柴田・陳、その他諸々の三国志とは全く違う。人物が丹念に書き込まれ、いちいち、な〜るほどと感心してしまうくらい現実的に正史三国志を巧みに小説化したといっていいと思う。皇甫嵩や朱儁ほか、なかなか素晴らしい将であるにもかかわらず何故、覇をとなえることができなかったのか、事実を書いているだけですよと言わんばかりの見事な筆致で描かれている。一応書いておくが、この巻は黄巾の乱の真っ最中から始まり霊帝が崩御、董卓が都を洛陽から長安へ遷都し、山場は袁紹と袁術の確執の出来上がり方まで書き上げること非常に丹念である。最期にやっと曹操・公孫サン・劉備が出てくるところで終る。構成は肉太で飽きることがない。ただ、出てくる単語が宮城谷流で難しいのでレッドクリフからこれに特攻するのだけは止めておいた方がいい。きっと、この巻で疲れ果ててしまうだろう。でも、三国志ファンであるなら一読すべし。巻末の当時の仏教思想についての書き下ろしは陳瞬臣の秘本三国志をお読みの方には解かるであろうが、いかに中国の宗教と政治の密接な関係があるかを物語っていて、次巻にも引き継がれていくのでこちらも楽しめる。こんなに濃厚に書いておいてさて、三傑が揃ったら一体どんな進み具合になるのだろうと楽しみだ。また村上豊の挿絵が雰囲気をとても盛り上げており素敵である。4巻は同時に発売されたが5巻以降は今年2010年10月刊行、7巻以降は毎年1巻ずつ刊行予定とのことで楽しみではあるが、かなりじらされそうである。
董卓跋扈、曹操台頭。 ★★★★★
読書の愉しみ、ここにあり。
1冊、約390ページ、630円。この愉しみに支払う対価として、なんたる廉価。

既刊への皆さんのコメント通り、他の作家の同名異書とは全く異なります。
すなわち、小説「三国志演義」の再小説化ではなく、正史「三国志」に依拠して
小説化したという経緯は、文庫第1巻末にあった著者のメッセージに明らか。
(巻が進むにつれても、この第1巻末のメッセージは再読の価値あり)

吉川英治その他、暴虐や英邁を、墨痕鮮やかに、講談風に描く“三国志”も、
もちろん良かったが、宮城谷三国志の登場人物の魅力は、肉太でないのに陰影が濃いこと。
いわば食欲をそそるために、調味料やタレを工夫したり、眼を惹くように盛りつけたり、
というのではなく、研ぎ澄ました包丁の切れ味と、配膳の順番に最も意を注いで、
素材そのもののもつ、それこそ甘味や苦味を上手に引き出している、そんな感じだ。

こうした宮城谷氏の調理法に、満腹感や充実感を得にくいという方々の気持ちも分かるが、
何を食べても同じ味で、カロリーだけ無闇に高い中華風居酒屋店のメニューのように、
三国志の人物たちがみんな「力一杯つくりました!」的な造形になるのもどうかと思う。
(ま、それはそれで食欲はそそるので、別の機会に飽食するのはやぶさかでない)

宮城谷三国志では、悪臣の冷酷さ、奸兇さの相貌が、底光りしている。
名臣の苦難や、小悪党どもの戯画化と相対化された極悪の強調、というのではなく、
悪が悪であることとの「業」のような、果てしもない怖さ。
それゆえに、仁なる人々の運命には言葉を失う。

さて、後漢時代前期という、曹操も劉備も生まれる遥か以前から悠揚と書き起こされて、
ようやく3冊目にして、ついに董卓登場。
また本巻では、曹操がいよいよ本格的に台頭。
1、2巻で徹底的に、後漢の宿痾というべき宦官の弊が描かれてきただけに、
宦官の養子となって出世した曹嵩を父にもつ子=曹操という設定に、深みが加わる。
「レッド・クリフ」でしか曹操を知らない方々にぜひ読んで欲しい(無理か)。

さらに、宮城谷三国志の特色は、劉備の暗さ。
一歩間違えれば、凡庸というより小悪党で終わったかもしれない“王族の僭称者”が、
今後様々な経験を経て成長するという暗示がまた、たまらない。

単行本も刊行中、連載もまだ「文藝春秋」で毎月進行中。
「もっと先を知ってるぞ」という同志も多いだろう。だが、焦燥も嫉妬もない。
まだまだ、これから“類まれなる三国志”を読み続けられる至福が待っている。

しかも、この文庫(3巻以降)の魅力は安いだけではない。
《後漢と三国の仏教事情》という、時代精神の背景への宮城谷氏らしいエッセイが、
付記されている。このあと、続巻でも続く模様。
……いやあ、文春さん、商売がうまい。