牛島節が炸裂
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牛島先生の本は全て精読していますが,この本,特に冒頭の講演録は,そのエッセンスが詰まっていると思います。
「日本の訴訟制度が不備で,個人の救済のために十分機能していないことから,企業がリーガルリスクに不感症になっている」という趣旨の言,全くそのとおりだと思います。
民事訴訟は,個人が企業や国を相手に訴訟を提起する場合には,極めて使い勝手が悪い状態が続いています。
現行制度では,被告/防御側が圧倒的に有利(pro-defendant)です。企業は訴えられても怖くないのですよね。。。何故か?
何より,第1に,開示制度(discovery)がない(に等しい)からです。
第2に,立証のハードルが高いこと。
第3に,仮に責任が認められたとしても,損害の認定も厳格に過ぎる(安過ぎる)からです。
つまり,違法行為をしても,(1)開示制度がないから(内部通報されるとか,内通者がいない限り)バレない,(2)仮にバレたとしても,裁判所の損害の認定が厳しい(懲罰賠償がないのは勿論)。なので,大して痛くもない(責任が認められそうなら,和解してしまえばいい),ということなのです。
要するに,日本は,違法行為「やり得」の世界じゃないか,「法の支配」が十分に実現されていないと思います。