山田のタイでの天下取り合戦を軸に、物語は展開します。このようにタイプがまったく違う2人を主人公とし、際立たせる方法は、遠藤お得意のものです(Cf.『王妃マリーアントワネット』のマルグリットとアントワネット)が、対立の図式が明らか過ぎて、人間の感情が単純化されている気がしなくもないです。
遠藤周作の歴史物小説は、視点が独特で楽しめるものが多いのですが、エンタテイメント作品としては、これがイチオシです。めくるめく冒険活劇の中にも、遠藤周作らしい哲学的・宗教的な問題も盛り込まれていて、単に軽いだけの小説で終わっていないところも魅力です。