不器用ゆえに愛しい人たちの物語
★★★★★
自分はおしゃべりなほうだが、
しゃべれどもしゃべれども・・・
本当に伝えたいことは
なかなか伝わらない。
それぞれの登場人物がもつ
心の不具合が、言葉ではなく
表情やしぐさで表現される。
決して暗い話ではない。
でもそこはかとなく漂う人の世の行き辛さ。
そんな要素も入っているはずなのに
読めば心がほんのり暖かくなる。
ああ、小説っていい。
咄家
★★★☆☆
三度の飯より落語が好きで、噺家になったはいいが、目下前座よりちょっと上で真打ちより下の二ツ目である主人公。 そんな彼に話し方の指南を頼む人々が現れる。 落語という手段によって話し方を克服するという目的を果たすべく奮闘する。
何かをやり遂げたことは価値があり、やり遂げることが出来なかったものに対しては何もかもが無価値であるという風潮に対して一石を投じているような印象を受けました。結果のみを求めるのではなく、それに伴う過程も相応に重要視されるべきなのではないのでしょうか…。
「自分が大事だと思っているものから逃げると、絶対に後悔する」
安心して読める
★★★★☆
佐藤多佳子さんの作品はいいですね。
登場人物がみんな根っこではいい人で、話の展開も劇的なところはないのに引き込まれる。
題名から想像していたのとは少し違って、主人公の青年は落語会に生きるナイーブで不器用な人物でした。そこに集まってくる面々も、それぞれにコンプレクスを抱えて生きています。みんなで克服するというのでもなく、でも、集まってお互いのことを心配して、というのはいいなあと。
さわやかな読後感で、人生に疲れた時に読むと癒されるのではないでしょうか。
成長物語
★★★★★
若い噺家さんが主人公。
国分太一主演で映画化された作品。
人生のスランプに陥った人物達が集まって刺激しあってぶつかったりしながら少しだけ成長する、という、よくあるストーリーといえばそうなのですが、こ気味良いリズムで文章が進むので、楽しく読めました。
落語家の生活が垣間見える気もして、そっち方面でもオススメです。
主人公が平凡、少年がいい。
★★★★☆
「黄色い目の魚」を書いた著者だから、
繊細で丁寧な曖昧でもどかしい心理描写に期待して読み始めた。
ところが、この作品の登場人物たちはどうも類型的で、
まるでドラマの脚本のよう(結果的にドラマ化もされたことだし)。
全然期待はずれだなぁ、と、読みながら思っていた。
ところが、村林少年が出てきたところから急に良くなってきた。
やっぱり、この人には子供を書かせた方がいいなぁ。
村林少年の性格とか、彼の小学校のクラスとかの描写がいい。
でもやっぱりそれ以外のキャラクターが類型的で、
面白みに欠けていたなぁと思う。
ちょっとだけ落語に興味はでたけれどね。
肝心の落語の中身がすべて省略されていたところとか、
話に移入するのに無理があったなぁ。