1年に3人も皇帝が変わり、内乱で国は乱れ、辺境では蛮族が攻め寄せ、属州は反乱に立つ。国民は、政争に明け暮れる政治に無関心・・・と、まさに世紀末的な状況を迎えたローマ。カエサルのような天才はもはや得られない中で、凡人皇帝たちの悪戦苦闘する姿が描かれます。
史上、あまり有名でない皇帝たちですが、それぞれの人間性や政治手法が丁寧に叙述されていますので、彼らの長所も短所も含め、ある意味ほほえましい気持ちで楽しめました。これも塩野さんの皇帝たちへの愛ゆえでしょうか(さんざんけなしもしていますが)。
花を取るか実を取るか?危機の乗り切り方も人それぞれ。ですが、結局ローマを救ったのは、「寛容」というローマらしさなのでした。危機にあってこそ原点に帰り、当たり前のことを当たり前にやる。今までシリーズを読んできた方には非常に納得し、かつ、ためになる教訓を与えてくれます。
塩野さんの作品は、小説としてのおもしろさに加え、作家の目でさまざまな古文書・資料を研究しして、私たちにもわかりやすいように歴史の説明がされています。客観的なようでいながら、著者の思い入れが各地に散りばめられいる(このシリーズの4巻・5巻、カエサルの記!述を読めばほとんど恋愛感情に近い思いで記述されてます・・)ところが、同じ女性として歴史小説をおもしろく読めるところでしょう。