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ローマ人の物語 (5) ユリウス・カエサル-ルビコン以後

価格: ¥3,360
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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カエサルへの思いは伝わるが ★★★★☆
彼がどうして国法を犯してまで内乱を起こさねばならなかったのか。
一体彼は、何をしようとしたのかは十分に説明されていない。

「勝者の混迷」から始まった、共和政ローマの衰退について、著者は
あまり多くを語っていない。このあたりの事情は、ホランドの
「ルビコン」やモムゼンに率直に述べられている。
また、著者はカティリーナの反乱へのカエサルの関与に否定的だが、
民衆派のリーダーたるカエサルが裏て糸を引いていたと考える人も
多い。カトーがいきりたつのにはそれなりの理由があったのかもしれない。

そして何より、こんなにすごいカエサルが側近たちにさえ暗殺
されるほど憎悪されていた理由が、この本からは伝わってはこない。
モムゼンの受け売りになるのだろうが、彼は事実上の王になっても
味方に媚を売らず、敵を赦し、祖国の再生と発展を自分の生命よりも
優先したのだと思う。この巻に続いて、アウグストゥスの種々の施策
が述べられる。著者は、グランドデザインがカエサルで、それを実現
したのがアウグストゥスという立場のようだが、アウグストゥスは
カエサルが始めた政策を継続したのだと私は考えている。デザインを
インプリメントするには相当の創造性を必要とするが、その最も根本的な
部分は、すでにカエサルによるお手本が存在していたのだと思う。どんな
技術でもそうだが、先例があるとき、それを模倣することは、最初にそれを
行なうよりもずっと簡単なものである。

そうした記述は本書を覆う戦記や楽しい挿話に比べると退屈である。
しかし、カエサルの内面や、明るくもてててケンカに強い以外の彼の姿に
迫るには、彼がガリアを征服し内乱に勝った後の短い間に行なった、
極めて画期的ないくつもの政策についてもう少し紙面を割いて述べる
べきだったと思う。

とはいえ、この本は読みやすく、楽しいカエサルに関する本であることに
間違いはない。私も楽しく読ませてもらった。
運命の3月15日 ★★★★★
 ルビコン川を渡った後のカエサル。時は運命の3月15日に突き進む。

 政敵ポンペイウスを破り、エジプトも従えたカエサル。クレオパトラが美貌でカエサルをたらし込む映画もあるが、そんな事はない。ローマの上流階級のかなりの割合の女性を関係したと言われるカエサルである。クレオパトラもその中の1人だろうと著者は言う。

 さて、ここまで権力を握ると、他人は嫉妬するものである。しかも共和制信者の当時のローマ人はカエサルが王になろうとしていると疑心暗鬼になる。やがて彼らはカエサルを暗殺する。それが3月15日。国の宝とも言える人材をテロってしまった。

 遺言で後継者に指名されたオクタヴィアヌスはやがてローマを統一し、長い一生をかけてローマを帝国に変えていく。アウグストゥス(尊厳者)の称号を与えられた彼が初代ローマ皇帝とされる。

 腹が立つのは、カエサルとアウグストゥスを称えるために7月と8月の名前を彼ら2人の名で呼ぶことにして月の名称をずらしたことだ。英語のJulyとAugustの起源である。困ったものだ。
背中がザワザワ ★★★★★
なんでこんなに心が動かされるのだろう。2000年以上前に生きた不世出の天才カエサルの一生は。
いつも冷静すぎるほど冷静な著者が、カエサルについては、感情を隠し切れないほど厚い文章を書く。
「ローマ人の物語」のシリーズの中では、ある意味この章は異質かも。

ただ、ギリギリのところで著者の客観的な目が残っているから読みやすいのだけれど、
何度読んでも最後はなんとも言えない切ない気持ちにさせられる。

「兎に角、これを読まなくちゃはじまらない!」そんな一冊です。
理想のローマ人(下) ★★★★★
 もう本書全体から、著者のカエサルへの思い入れがあふれ出ている名作です。伝えたい魅力は無数に思いつき、すべてを書き連ねていたら、それこそレビュー規約をオーバーしてしまいます。そこで、私もカエサルと、著者に倣って、ひとつ箇条書きで本書の見所と感じたことを書き綴ってみたいと思います。

 1、主観も交えながらも感情に走らない客観的な視点(本書は一応カエサルが主人公な訳ですが、敵役であるポンペイウスや無為の暗殺を実行したブルータスらにも理解すべき部分があったことをしっかりと指摘している)2、小さな挿話でも無下にしない(カエサルの頭に何が載るかも重要ですが、カエサルの頭から何が抜け落ちて行ったかも興味深い事実。このような身近な話題は、厚みのある歴史叙述には重要)3、目先のドラマより深い歴史の面白さ(私はこの時代を扱った歴史ものの中でクレオパトラが異様に高く評価される、判官びいきにも似た状態をつとに苦々しく思っており、かといって明確な反論が出来る力もなく、どうもこの時代自体敬遠しがちだったのです。ところが著者は、自分も女であるので、女の浅はかさとは言いたくないが、クレオパトラは浅はかであった、と一蹴。その鼻が高かろうが低かろうが、歴史の趨勢にさしたる影響のないことを理路整然と証明してくれ、私は思わず喝采を叫びました。これこそ目立つものばかりに徹底的に光を当てまくる、薄っぺらい歴史ものでないことの証拠)4、個々のものを重視する帰納的姿勢(戦時、平時を問わず、カエサルの行動を一つ一つ追って行くことによって、むしろカエサルとはどんな人間だと説明することなくその姿を自然と浮き彫りにしていく。著者の追体験をしているようで、まったくうまい)
 以上は私の感想ですが、本書は、おそらく読者の方それぞれにまた違った無数の感銘を与えてくれることでしょう。

愚かな暗殺者たち ★★★★★
カエサル(シーザー)は、軍事、民政両方の天才だった。帝政に向かってローマを導こうとしたのも、それが超大国となったローマを統治する最も適した政体だと考えたからだ。ところが王政アレルギーの強い一部の人間たちによって暗殺されてしまった。ここで驚くのが、暗殺者たちが、「カエサル後」について何も準備していなかったことだ。カエサルの信条である「寛容」、未来を見通す透徹した眼、偉大な人間を失った悲しみが、読者にも伝わる。