苦い初恋の物語だがそれはあまり関係がない。
★★★★☆
この小説は、一人の青年の「苦い」初恋の物語である。しかし、私は話の本筋よりも登場人物の言葉に印象を受けた。一つ例をあげるならば、青年の父親の言葉である。彼は民主主義を信奉する若者であった青年が自由について、考えを述べたときこう答えたのである。「取れるものは自分で取るんだ。くじけてはいけない。つねに自分自身でいること、それこそ人生の醍醐味だよ」という言葉である。そしてその言葉の後には、「意志、自分自身の意志だよ。意志は自由だけじゃなく権力まで与えてくれる。権力は自由より大事なくらいだ。自分自身の意志で望むことができれば、自由にもなれるし、まわりの人間に采配をふるうこともできる」とも述べている。この言葉は自分の中に深く突き刺さった。「取れるものは自分で取るんだ…それこそ人生の醍醐味だ」と言うが、果して自分自身はそうであったのか?物語の本筋よりもこの言葉に深く考えさせられた。
中学生には早かった作品
★★★★☆
私が初めて読んだ外国文学の作品です。中学3年生のときでした。
「ウラジミール少年が初めて愛した人は…」
どこかの雑誌に載っていた書評にこの一文のみが書かれていました。中学生時代の私は日本文学、特に戦後派と言われている作家の作品をよく読んでいました。この本も彼らの描く恋愛要素の入った小説に近いかと、勝手に想像して読みましたが、読後に後悔したのを覚えています。本の内容、スピード感などすべてが今まで読んできた小説とは明らかに異なり、2日間眠りにつくことはできませんでした。(大げさではなく事実です)
新訳が出版されたと言うことで、早速買って読んでみました。しかしあの時のような感情が湧き起こりませんでした。訳が悪いとは思いませんがなぜでしょう?
トゥルゲーネフの自伝的な忘れ得ぬ初恋
★★★★★
カラマーゾフの兄弟を読み、古典(ロシア文学)も面白いと思い
ロシア文豪の一人であるトゥルゲーネフの本書を読んでみました。
16歳の少年が年上の女性に初恋をした時から、最後の幕切れまで
著書の自伝的要素を織り込んで描かれています。
少年の心のときめき、不安、虚無感等がみずみずしく描かれており
個人的にはBeethovenのクラシックのように、主人公の歓喜、純粋さ
誠実さ、一途さ、抱えている不安といったものが(読み手の)心に
すっと入ってきました。
自分が忘れ(かけ)た若い頃の感覚をふと思い出してみたい方は
主人公といっしょに、19世紀のロシアにタイムスリップするのも
悪くないと思います。
よしもとばななを読んだような不思議なtexture。
★★★★☆
25年ぶりに本作品を読みました。以前は角川文庫で読みました。夜中寝室で、古典を読むんだという意気込みで、難解な文章を読み解くように読みました。十分理解できたようで、理解できなかったようで、でもジナイーダの美しさが心に残りました。
今回は、40前後の男が自分の初恋を思い出すという部分にやけにしみじみとしたものを感じてしまいました。
わかりやすく、丁寧で、上品な翻訳のおかげで最初の1ページを開いた瞬間から、ふと気がつくと最後のページまで一気に読めていました。
ツルゲーネフを読んだというより、よしもとばななを読んだような不思議なtextureを楽しんでいました。
これが、新訳の力なのでしょうか。
とにかく、古めかしさをどこかに感じることもなく、古典を読めるということに素直に感謝します。
この文庫シリーズのおかげで、古典がとても身近なものになりました。
有難うございます。
気になる少女
★★★★☆
ロシア文学はちょっと難しそうで苦手だったのですが、
ぱらぱらめくってみると、上品かつひきこまれる語り口。
よかったです。
親しい三人の男たちが、自分の初恋について話をする。
うまく話せないので、ノートに書いてくるといった一人の男の、
初恋の話がこのお話の主な部分を構成しています。
彼が16歳のとき。奔放な年上の美少女。
やがて現れる、彼女の心を奪う男。
少年の、彼自身の心をあからさまに、誠実に書かれています。
しかし、それ以上に、少女と、男の気持ちが心に残ります。
特に、奔放だった少女の、恋による変化の描き方は
凛として、悲しく、美しいです。