「東スポ」の見出しのような書名の付け方(涙)
★☆☆☆☆
私は高校で「倫理」と「現代社会」を教えておりまして、子どもたちに
どうやったら哲学的なものの見方を教えられるか、いつも頭を痛めております。
「哲学は人生の役に立つのか」という書名を見て、なにがしかのヒントが
得られるかと期待して手に取りました。
しかし、書名と違い、この本の内容は著者の人生の歴史、例えば戦後どんなに
苦労したかとか、語学をどう勉強したかとか、ハイデガーを理解する為に
どんな本を読んだかとか、自分の書いた本が版を何刷重ねてよく売れたとか、
そういうもので占められていて、かんじんの「哲学は人生の役に立つのか」という
テーマではほとんど何も論ぜられていません。
私には何の役にも立ちませんでした。
本を選ぶ時、書名を見て選ぶ人もけっこういると思います。
こういう「東スポ」の見出しのような書名の付け方はやめて欲しいです(涙)。
読み物として・・・
★★★★☆
哲学が人生の役に立つかどうかは主観の問題であるが、読み物としては面白いと思う。
大半が自分史で構成されているので、好き嫌いがはっきりとしてしまうのは仕方のないことであろう。
ただ、哲学に対する真摯な態度や地道な努力が伺えて、その姿勢を見習うだけでも読む価値はあると判断したので、☆4つです。
哲学は本当に社会に役立たないのか?
★☆☆☆☆
最近、書籍のタイトルとその内容が一致していないものが多すぎる。本書もその例であり、羊頭狗肉と言われてもしかたない。出版社に反省を促したい。個々の哲学的主張が具体的に人生にどのように役に立つのか立たないのかといった議論がまったくされていない。著者がタイトルを意識して本書を著したのではなく、後から付けられたからだろう。
著者の生い立ちと人生が一方で語られ、他方で彼の哲学への取り組みの奇跡が語られるだけで、その両者がクロスすることはない。
著者は哲学者であり教育者であるから、哲学によって生活の糧が与えられてきたことは確かである。だから著者自身にとっては哲学はまさに人生に役立つ糧であったに違いない。最後の方にはそういった「おち」まで語られている。読者はそんなことを期待しているのではない。ハイデガーの『存在と時間』の中の死に対する考え方が私たちの日常生活の中で(あるいは現代医療まで拡張してよいだろう)どのように役立つのか役立たないのかを期待しているのだ、
「はじめに」では哲学は社会の役に立たないという結論を先取りしているが(5頁)、本当に役立たないのかもう一度考えて欲しい。哲学は一部の研究者のマスターペーションではない。
いつもの木田さん
★★★☆☆
星の数は木田さんの著書を読んできた僕自身の評価であって(本当は3.5くらいにしたいですが)、本書を始めて手に取られる方についてはこの限りではないと思います。本書の価値を貶めるものではないということです。
まあいつもの木田さんです。いつも通りにご自身の生い立ち、哲学への興味の出発から入っておられます。いろんな本に書かれているのでもう空で言えるくらいに覚えてしまいましたが(笑) しかし始めて知る事柄もあったり……、個人的にはとても身近な場所の地名が出てきて驚きました!
木田さんの文章を読み慣れてきた人間にとっては目新しさに欠けると思います。木田さんなりの哲学のやり方、受けとめ方、やってきたことの紹介等々……、哲学を勉強するに当たってちょいと参考にはなるかもしれません。あと木田元という人間を知る参考にも。内容について欲を言うと、若干まとまりがないのでもう少し的を絞って書いていただきたかったかなあと。
表題にもある「哲学は人生の役に立つのか」は、木田さん自身にとってどうだったかというのは本書の内容から推して知ることはできます。普遍的な意味での「答え」を求める方にとっては参考程度にはなったでしょう。ただ、そのように答えを求めて本書のようなタイトルの本を手に取る方はそもそも哲学をするには向いていないとは思いますが……。よく言う意味で「役に立つ」と思って「哲学」をされている方は確かにいらっしゃるようですから。
そんなことは関係なく、一哲学者の人生記として読んでみるのは別に構わないことです。人生訓として為になることもありますから。僕もそうですし。ともあれ、気軽に手に取ってみてはいかがでしょうか。そう言う意味ではおすすめしたい。
哲学は人生の役に立つのか否か、あなたはどうお考えですか?
哲学は哲学者の人生には役に立つ
★★☆☆☆
表題から期待していた内容は、著者が研究によって得てきた「哲学」についての紹介、及び、哲学というのは実際的に役に立つものではないが(便利になるとか技術が進歩するという類のものではない)「人生の役に立つ」としたらどういう意味でなのか、著者の意見が述べられている・・というものでした。
が、著者は一生涯哲学を研究して生きてきた、思考を続けるための糧として、あるいはまた単に飯のタネとして、哲学は著者の人生には役に立ったということが書かれているだけでした。
たまたま著者が面白いと感じ、一生を通じて興味を持つ対象が哲学であったということで、哲学という学問が存在することが他の人の人生に役立つかどうかはちっとも触れられていません。
哲学というのは、既にある、先人の言葉を研究する学問なのでしょうか?(私は哲学者にはそれぞれ自身の「哲学」なるものがあり、それについて論理の整合性などを考え続けているのだと思っていました。)著者の研究していることがらがどういうことかもわかりませんでした。ハイデガーの著書を読み込んで、時を経ていろいろ資料が公開されたり他の人の著作からヒントを得たり・・というような経過は面白く読めましたが、それで何がわかったのかはわかりません(どうせ書き切れないし既刊本にあるからいいということなのでしょうが)。
人生訓のような部分もありますが、その部分は逆に一般的に過ぎ、哲学に立脚した意見ではなく、ただ自分の人生の過ごし方を振り返っての見方に終始しています。
好きなことをして一生を過ごせるのが幸せ。大学入学と共に専門を決めてしまうのは早すぎる。
という点には賛成しますが、浮世離れした意見も多く(学者らしく・・)あまり納得はできません。
残念ながら、哲学についての理解はさっぱり深まりませんでした。