海外旅行が珍しかった頃の話
★★☆☆☆
なかなか海外旅行に行けなかった時代には売れただろうが、トントン拍子で話が進みすぎで馬鹿らしく思えてくる。だいたい荒野を目指すって、女の子とセックスばかりしているじゃないか。沢木耕太郎の「深夜特急」は今読んでも面白いが、これは長く読み継がれるような作品ではない。
作中、ナチスの隠した財宝!を探しに行く話が出てくる。まだ戦争の記憶が新しかった時代をうかがわせる。
また、人間の皮で作ったランプシェードの話が出てくる。未知の世界に進んでいく感じが「銀河鉄道999」(映画のほう)に似ている。松本零士氏はこの作品を読んだんじゃないだろうか?
十代でこの本に出会えてよかった
★★★★★
十代の青年のまだ人間として完成されていない脆弱さみたいなものが痛いほど伝わってくる小説だ。その弱さがある故に青年は青年でありうるのだが彼はひたすら悩み、ひたすら行動する。その姿が本当に美しいというかかっこいいのだ。おそらく本書は十代の今だからこそ感動できるものであり、時期を逃すとそれほど魅力のない作品になってしまっていただろう。是非十代、二十代の人生の道筋がまだ決まってない世代に読んでもらいたい。
二十歳の若者の心臓の鼓動がばくばくと聞こえてくる
★★★★★
二十歳のジュンは、ミュージシャンを目指しロシアへと向かう。アルバイトをしながらヨーロッパ、そしてニューヨークを目指し旅をする。始めから、終わりまでとにかく二十歳の若者の心臓の鼓動がばくばくと聞こえてくるようでした。終始、無茶苦茶な旅なのだが、引き込まれた。大変新鮮な小説でした。
バックパッカーから見ても良くできている本
★★★★★
私自身、良く海外一人旅(俗に言うバックパック旅行)をするのですが、そういう私から見ても、この小説は良くできていると思います。
もちろん、一度別れた人と旅の途中に何度も会うようなことは、実際ほとんどあり得ないので、幾分リアリティに欠けている部分はありますが、それでも一人旅の雰囲気や、町の描写、人との出会い、旅先で日本人に会ったときの気恥ずかしい気持ちなど、まさにこんな感じだと思いました。
海外にあこがれている人には、是非読んでもらいたい一冊です。
本当の「冒険小説」
★★★★★
現代は、この作品が出た頃とは違う。純粋に荒野を目指せた頃が羨ましい、と思ってしまうその心こそ、今の時代に生きる者が向き合わなければならない荒野なのだろう。
ジャズ奏者がユーラシア大陸を旅するこの作品で、作者は安易な問題を扱うことはない。芸術と倫理の問題、性と感性の問題、戦争と命の問題。これらは現代もなお答えのない問題であり続けている。その問題を自らの荒野とするなら、この小説の意味は変わらず大きいだろう。もっとも、一つの娯楽小説としても絶品ではあるのだが。