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バースト・ゾーン―爆裂地区 (ハヤカワ文庫JA)

価格: ¥924
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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グロテスクのあるリアリズム ★★★★☆
吉村萬壱の描く世界は実も蓋もなく残酷で容赦なくグロテスクであるが、
目をそむけられない迫力がある。
これで4作を読み終わったが、どれも傑作だ。

オフィシャルな場所で「好きなんです」ということには少し勇気のいる作
家であるが、間違いなく私は吉村萬壱の作品が好きだ。

なんでだろう。ちょっと考えてみた。
それがどんな世界のどんなストーリーであれ、私は小説の中にある「ほんと
うのこと」が好きだ。
それを味わうために小説を読んでいるといってもいい。

そして、あらゆる小説の追い求める「本当」とは常に我々の心であり、それ
以外にはないと思う。
一瞬も休むことなく不定形に揺れ動き、他人はもちろん家族や恋人、さらに
は自分自身でも完全に掌握することは不可能としか思えない、私たち自身の
心を上手に切り取ってあれば、それは私にとって常によい小説である。

そして吉村萬壱の小説は、あらゆる場面や状況で貪欲に生と快楽を貪ろうと
する我々の心の利己性を容赦なくえぐり出している点で秀逸であり、直截に
言うと面白いのだろう。

彼の小説に登場する人物たちは、「いわゆる人間性と呼ばれるものを捨てな
ければ生き延びることができない」という試練を与えられる。
そしてそうなると、彼らは実にもうあっさりとその人間性をポイ捨てし、刹
那の生にしがみつく。

「人間性を捨てる」という表現はごく抽象的で、この言葉自体には何の破壊
力もないが、吉村氏の凄みは登場人物たちに強要するシチュエーションのリ
アルさであり、その想像力は悪魔的ですらあると言える。

「えっ、そこまでやらなくちゃダメなんですか?」というような、およそ万
物の霊長とか人類の尊厳とかいった言葉が木っ端微塵になるような状況が、
物語の序盤からじゃんじゃん現れ、そしてそれが延々と続く。

最大のポイントは、その物語の根底にある吉村氏の「でも人間はそこまでや
るし、どこまでだって堕ちることができるだろ。」という絶望的に冷徹な思
想であり、その思想に対して私自身が「まあそうだね、そうゆうこともある
かもね。」と納得してしまうリアリティにあるのだろう。

本作はかなりの分量があり、物語の本質は中盤以降に現れてくる。
また、かなり読み手を選ぶ一冊であり、ダメな人は全然だめだと思う。
先に「クチュクチュバーン」を読んで「まだイケル」と思った人だけが読む
べき小説でしょう。
商品以下 ★☆☆☆☆
作りこみは浅く凡庸。
謎をちりばめた小説だが、即タネが割れる底の浅い謎ばかり。
想像力は妄想の域を出ず、金を取って読者に自己の妄想を押し付けるというのは犯罪的。
物語に一貫性はない。つじつまのあわないところも多々散見する。

物語性を求めない前衛小説であるならば、
グロへの書き込みなり仕掛けの作りこみなりで読者を牽引するものだが、
そのどれも、あまりにも物足らない。
文章も稚拙で、特に比喩表現の幼稚さが目立つ。

ありていに言えば、こういう小説を書くには著者は甚だしく実力不足。
吉村萬壱は、自分の分を超えるものを書いて、どうしようもなく失敗したと言えるだろう。
この世界は糞ったれだ ★★★★★
著者は、人間が嫌いなのだと思う。人間の「尊厳」を踏みにじるような描写が延々と続く。人間は糞だし、この世界は糞ったれだ。だけど、糞にも(糞だから?)メタンガスのような「幻想」がポツポツと発生し、さらなら爆発を招く…。町田康の『告白』にも匹敵する傑作だ。俺は支持するぞ。
ありえないようだけど、でも・・・ ★★★★★
ストーリーの中で起こることはとてもありえないことのように見えるが、実は過去や未来に充分起こりえることなのではないか?と、とても恐ろしい。お国の為に戦いに行くことが当たり前とされていた戦時中のようであり、テロに対する報復に向かって沸き上がっていたのは、まだ記憶に新しい。みんなをその気にさせてしまう怖さ。神充のような化け物はありえないだろうが、クローン技術の進歩による突然変異やちょっとしたミス?で、わけの分からない生き物が生まれる可能性だってあるかもしれない。ストーリーの中に、目を背けたくなるような描写はいくつもあるものの、「どうなっていくの?」とドキドキする面白さでどんどん読み進んでいく。またいろいろな情景や心情の描写が細かく豊かに書かれている。体を売る仕事をしている小柳寛子が、とんでもない目に遭いながらも誇り高く感じさせられるのは、1人の男性に対する愛をまっすぐに貫いているからなのではないかと感じた。
意味のない暴力が好きな人に ★★★★☆
 友成純一や大石圭のような,「暴力を振るうこと自体」が好きな人には格好の作品のような気がする。あるいは,遠藤徹のような・・・。
 ただ,無意味な暴力の繰り返しを膨大に書き連ねながら,「テロリンとは何なのか(本当に存在するのか)?」「神充とは何なのか(本当に存在するのか)?」といった辺りの謎が,それなりに解きほぐされていく辺りは,さすがと感じた。
 「無意味な暴力」を読むのがさして苦痛ではない人にとっては,本書はそれなりの壮大な叙事詩とでもいっていい作品として楽しめるのではなかろうか?