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ゼロ時間へ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

価格: ¥798
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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異能力 ただおる ★★★★★
存在しているだけで価値があることがある。
本文の中で、自殺未遂をした人に対する看護婦の助言の一節です。

人間、存在しているだけで、他の人の役に立つことがあるということが、本書で受けた最大の伝言です。

人間の価値の大きさを感じることができただけで、本書を読んだ価値があったと思いました。

ps.
ある漫画で「異能力ただおる」という、いるだけの能力がある人の話しを聞いたことがあります。
当時は、ピンと来ていませんでしたが、看護婦さんからの助言には、重みを感じました。
既視感と未視感の狭間で.... ★★★★★
クリスティらしい。斬新だ。ミステリにあるひとつルール(仕組み)が頭に入ってる人間なら尚そう感じるであろう一品。冒頭からめまぐるしく
移行する人物の視点にまず戸惑う。だが、さすがのクリスティは移行が滑らかで簡潔にして充分すぎる人物描写は妙。それが、事件の舞台となる
風光明媚ながらも穏やかな海辺の屋敷へと集っていく。本文で語られるとおり何も知ることなく、殺人が起こるまさにその瞬間へ...

...そしてゼロ時間へ立ち会ったとき身震いするような驚きがある。まんまと騙されたと。でも悪くない体験なので是非に。
「ただそこにいるだけで・・・・・」(P24) ★★★★☆
ロマンスですね。
O・ヘンリーに似たスリリングな展開もこの作品の魅力です。
登場人物の一人ひとりが懸命に自身の人生を語り、
ドラマの厚みを増しています。
物語の構成も素晴らしいです。
ウ、ウン、勿論今回もマダム・クリスティーにやられちゃいました。
面白いけど、そんなに斬新かなぁ? ★★★★☆
冒頭に殺人事件が起き、その後に探偵が登場して謎を解決するという通常のミステリー作品のスタイルに対し、本書は殺人事件が起きる瞬間の「ゼロ時間」に向かうという作品で、今でこそ別に珍しくも何ともない手法だが、当時としては斬新だったようだ。
また、冒頭で殺人の瞬間=「ゼロ時間」に向かって行くと記していること自体が読者を「わな」にかけているわけで、これも当時としては新しい手法だったかも知れない。
いや、現代においても作者と犯人が仕掛けた「ゼロ時間」の謎は、本書の探偵役であるバトル警視に謎解きをされるまで決して読み解かれることはないだろう。

ただ、犯人の狙いとする「ゼロ時間」の殺人というのは、既にディクスン・カーによって本書の9年前にカーター・ディクスン名義の作品『赤後家の殺人』で試みられている。カーはそれを標榜していないだけのことで、そう考えると本書の構成は別に斬新という程のものではない。
そうして本書と『赤後家〜』とを比べると、トリックや謎解きの論理などは圧倒的に『赤後家〜』の方が優れている。逆に本書の方が優れているのは、シンプルゆえの読みやすさ、わかりやすさ、面白さであり、『赤後家〜』は読みにくくわかりにくい。要するに悪筆だが不可能トリックや謎解きの論理にこだわるカーに対して、ストーリー・テラーのクリスティーという、各々の長所と短所が見事に浮き彫りにされる両作品なのである。

江戸川乱歩は本書を作者ベスト8に挙げているが、その一方で『赤後家〜』を「カー作品中一流のもの」と評しているのは、両作品の類似性とそれぞれの長所と短所の対比の面白さに気づいていたからなのかも知れない。

なお、本書の探偵役のバトル警視は、これまでにも『チムニーズ館の秘密』や『七つの時計』、『ひらいたトランプ』などそれぞれ持ち味の違う傑作・佳作に登場し、その中で有能と評されながらも一度も主役を張ることはできなかったが、『ひらいたトランプ』でポアロと共演したためか、本書では少しポアロのことを思い出しながら冴えた推理を披露している。
「ときに真実は表面上の事ではわからない」という人間社会を描いた傑作 ★★★★★
これも意外な犯人に驚きました。私は犯人を逃がしました^^?カバーの古いエレベーターの写真が「ゼロ時間」に向かっての第一の事件の兆しにもなっていい効果になっている。最後の急転直下の展開に驚く。怪しい人が次々出てくる訳ありの人間模様の中で出てくる表面とは全く逆の人間関係に「実社会で、怖いけどありうるなー」という思えるだけに傑作だと思う。落とし穴のような終盤の急転直下の展開が実に素晴らしい。そして意外なハッピーエンドは他の作品にはない清々(すがすが)しい読後感を与えてくれる。