50年代を代表するソニー・ロリンズのアルバムといえば『サキソフォン・コロッサス』『ウェイ・アウト・ウエスト』、ヴィレッジ・ヴァンガードのライヴ盤など、傑作が目白押しである。そうした作品に比べると本作は地味に映るかもしれないが、傑作は必ずしも愛聴盤ではないのだ。本作は、多くの人がフェイヴァリット・アルバムの上位に入れる人気盤だ。
   その理由はいたって単純明快。楽しい作品だからである。アップ・テンポでスピード感満点のソロを繰り広げる<1>と<5>、本作の人気はこの2曲によるといっても過言ではない。どちらもおなじみのスタンダードだが、ロリンズの解釈は独特で、縦横無尽に繰り広げるアドリブも冴えている。
   録音は55年。ロリンズは54年秋から約1年間シーンを離れ、シカゴで引退同様の生活を送っていたが、同地を訪れたクリフォード・ブラウン＆マックス・ローチとの交流を通じてカムバックを決意。同クインテットに加わって、ニューヨークに戻った。本作は復帰後の最初の作品。ロリンズの快進撃は本作から始まった。（市川正二）